BIGマンCMと宝くじ

【宝くじCMの問題】

色んなところで書いてきましたが、個人的に宝くじはあまり好きではありません。理由は簡単で、当たらないからです(笑)。もう少し正確に言うと、買えば買うほど期待値が下がっていくという商材だからです。
決定的に駄目だなぁと思ったのは、子供の頃、所ジョージが宣伝をしていたのを見たときでした。曰く、当たった人は、10枚ではなくて20枚とか、30枚と買っている。20枚買えば、当たる確率は倍、とかなんとか言っていたと記憶しています。
誤解を招く表現だなぁと思いました。当たる確率は確かに上がるでしょうけれど、期待値は確実に下がります。元締めが5割ぐらいを持っていくという、相当なアンフェアゲームなのですから。合理的な説得を装うところがたちが悪い。この点、競馬もまあずいぶん持っていかれますが,まだまし。パチンコはもっとましです。さらに言えば、競馬もパチンコも、技術介入の余地がある(と思われる)という点で、さらに良心的だと言えます。
そんなこんなで、宝くじはあまり好きでないわけですが、それに輪をかけて、この数年ずいぶんとテレビCMが打たれてきました。それがますます嫌なわけです。テレビCMは無料では出来ませんから、当然予算がかけられています。その予算は、結局宝くじの配当分からでているわけです(正確には、元締めに元々とられていた分かもしれませんが)。興味深いことに、宝くじ協会の財務諸表はネット上で公開されています。これを調べれば、もう少しいろいろわかるかもしれません。
誤解なく言っておけば、宝くじには夢があります。万が一にも当たらないにしても、当たれば億万長者です。その夢に賭けることは購入者としては全うです。僕も当たりたい。けれども、だからこそ、この購入者の夢を過度に煽ったり、それから誤解させたり、取り分をたくさん持っていってしまうようなことは、あまりしてほしくないと思うわけです。

【BIGマンはありかもしれない】

さて、少し前置きが長くなりましたが、そんな中で、最近見たBIGのCMはありかもしれないと思いました。予算をかけてしまっている、という点ではこれまでのテレビCMと変わらないわけですが、内容として、うまく宝くじの危うさを示しているような気がしました。

 

BIGという宝くじは、正確には宝くじではなくてサッカーゲームのtotoです。この点で、これ自体は技術介入の余地があるようにもみえます(実際はわかりませんが)。そういう意味ではいわゆる完全ランダムな宝くじとは違うのかもしれませんが、いずれにせよテレビCMは興味深い。

何が興味深いかというと、高田純次というキャラクターを使った、という一点につきます。言うまでもなく、高田純次といえば平成のテキトー王とも異名を取る芸能人です。ようするに、発言にせよ何にせよ、適当であることを一つの芸風にしている。その彼が、BIGマンというキャラに扮して、宣伝をするわけです。

最初のテレビCMでは、暴漢に襲われそうになっている女性がBIGマンに助けを求めます。そこですかさずBIGマンは答えます。「無理です。」この構図は、購入者とBIGという宝くじの関係を示唆しているようにみえます。当たりたい。無理です。というわけです(笑

その後「買わないと当たらない」なんていうまた誤解を招く一言が挿入されてしまいますが、全体として、BIGのテレビCMは宝くじのうさんくささ、当たらないし、買えば買うほど損をする率の悪いゲームだし、ということをBIGマンの適当さを通じて表象できている気がします。そしていずれにせよ、どう表現されようとも、結局は僕たちは宝くじを買おうかなと思ってしまうわけですが。

ただまあ、付け加えて言えば、その後もいくつか続編が出来ていますが、こちらはまああんまりかな、という印象。面白いとは思いますが、宝くじの危うさを伝えようとする気持ちがあまり感じられない。面白くして、笑いをとれれば良いような、そんな印象があります。せっかくなので、もう少しがんばってみて欲しいな。

【最後にもう少し

後せっかくなのでもう一つ足すと、そういえば最近高田純次を使ったCMがずいぶん多い気がします。それだけ好感度が高いということなのかもしれませんが、その多くは、彼のテキトーさという強みをうまくいかせていない気もします。単に面白いだけであれば、他のお笑い芸人でもいいでしょう。

こないだ見たところでは、ホンダのテレビCM。高田純次ということで、伝えるべき車種の名前や特徴を覚えていないわけです。それそれで笑いを誘うものですし、メタ広告としての要件を備えているとは思うのですが、そのぐらいであれば、別に彼を使わなくても出来るような気がする。あるいは、もっと真面目なキャラに、同じことを言わせた方がインパクトがあるかもしれない。逆のパターンで良かったのは黒ラベルですかね(黒ラベルのこの手のCMは、やっぱり白鵬がすごい良かった)。これもいいなと,そういえば思いました。

いずれにせよ、適当であるということが、企業や企業広告のうさんくささとうまく重なるような(あるいはその逆でも良いのかもしれない)、そんなCMが面白いのではと思う今日この頃です。


2011年08月14日 | Posted in エッセイ | | Comments Closed 

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