マーケティング・ミックスは遺物か

マーケティングを学ぶ上で、いつものように登場するのはマーケティング・ミックス、4Pと呼ばれる枠組みです。すなわち、製品、価格、流通、プロモーションの4つの要素を組み合わせることで、効果的に市場に対応することができるようになります。

当たり前すぎる枠組みですが、一方で以前から思っていたのは、実務的には利用範囲が随分と狭い気がするということでした。特に価格や流通については、ほとんど考える余地なく自明という業界が多そうです。その上で、製品とプロモーションだけに注目するのならば、イノベーションと狭義のマーケティングということになり、なんのことはない、ビジネスの基本というだけなのかもと思うこともありました。

これに対して、マーケティングにおけるもう一つの定番の枠組み、STPについては驚くべき汎用性があります。顧客を知るということと、自社の強みや特徴を競合との比較において理解するということは、たぶん、どの業界でも必須の枠組みと言えます。結果、例えばマーケティングの研修をという場合には、こちらのSTPをメインに説明することが多くなります。

そんな次第で、マーケティング・ミックスをどう考えたらいいかということについて、今の所のいくつかのアイデアをまとめておこうと思います。

1。基本的なマーケティング・ミックス

まずは基本的な考え方として、従来通り、4つの対象の組み合わせとしてマーケティング・ミックスを考えることができます。プッシュ型、プル型といった定番の組み合わせを考えることで、市場に有効にアプローチできるであろうことはいうまでもありません。合わせて、少しゲームっぽい理解でもありますが、例えば金額を上下することで利益が変わることをベースにして、その利益をどこに配分するのか(製品開発か、値下げか、リベートか、あるいは広告か、など)を考えると、4つの連動をもう少し意識することができるようになります。

2。マーケティングの範囲としてのマーケティング・ミックス

二つ目は、マーケティング・ミックスを実務で利用するというよりは、マーケティングの範囲を設定しているものとして考えるという方法です。具体的にいえば、製品戦略の領域、価格戦略の領域、流通戦略の領域、それからプロモーション戦略の領域をマーケティングのサブ領域として考えます。これは教科書の章立てに典型的な使い方でして、様々な対象について、マーケティング・ミックスを応用するという場合にはこの意味で用いられることがあるように思います。

3。チェックリストとしてのマーケティング・ミックス

マーケティング・ミックスの応用という点では、これをチェックリスト化するという選択肢もあります。例えば、4Pを4Cにしてみる、あるいはサービス材ではさらに3、4つPを加えてみる。これらの方法では、元来の4Pとしてのつながりはなくなる一方で、各分野で気をつけるべき要素が個別に提示されることになり、汎用性は高まります。

4。制約条件としてのマーケティング・ミックス

最後に4つ目は、先日教えてもらってなるほどと思った方法でして、マーケティング・ミックスはむしろ現状のビジネスの制約条件としてみなすということでした。つまり、冒頭では価格や流通はほとんど動かしようがないことがあると話しましたが、これをむしろ積極的に捉え、4つの要素をこれから考えるべきビジネスを制約している条件であると考えるということです。コンビニでPBで販売提供するという場合には、4つの要素はたしかに制約条件としてみたほうが議論が進むように思います。

他にもまだありそうですが、ひとまず現状のアイデアのところまで。なんにせよ、最終的には、伝統あるマーケティング・ミックスという概念を再構築したいという次第です。


2018年05月02日 | Posted in エッセイ | | Comments Closed 

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