ブランドが一般名詞化する時

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ホッチキス
日本では、ステープラーと聞いても何のことかわからないが、ホッチキスと聞けば何かわかる。だが、ホッチキスはもともと会社の名前であって、製品のことではない。製品は、ステープラーであり、作っていた会社がホッチキス社である。

マクドナルド
かつて日本マクドナルド社長だった藤田田氏は、ある時子供が他のハンバーガーショップで「マクドナルド一つください」と言っているのを聞いてニヤリとしたという。当時、ハンバーガーはマクドナルドだと思っていた人もいるということである。

ウォークマン
ソニーが開発した小型の携帯型テープ再生機である。今では録音はもちろん、MP3プレイヤーへと進化を遂げている。世界中で利用されるようになったが、オーストラリアではウォークマンが一般名称となってしまい、ソニーは商標権を失うことになった。

うどんすき
意外にも、うどんすきという名称は、昭和初期に美々卵が考えた造語であるとされる。しかし、今では一般名詞となってしまっている。裁判所でも、かつては普通名称ではなかったことは間違いないが、今日では普通名称化しているとされ、商標権が認められなかった。

ブランドが一般名詞化する時
特定のブランドが、その製品全体を指す一般名詞に変わっていくことはよくあることである。先の例はすぐに思い出せるものを列挙したに過ぎない。美々卯の社長は、裁判所の判断を受けて、自社が考えた名称が世間に浸透し、誰もが当たり前のように使う言葉になった。こんなに名誉なことはないと述べたとされる。
だが一方で、裁判で争われたことからも窺えるように、ブランドがブランドとしての利用価値を失ってしまうことは、企業としては損失でもある。ウォークマンを作れるのは他ならぬソニーだけ、うどんすきを作れるのは他ならぬ美々卵だけと言った方が、当然のことながら企業の利益には寄与するだろう。ブランドは、より強く、より多くの人に知ってもらうことに意義があるが、あまりに強く、あまりに知られてしまうようになると、一般名詞化してその利用価値を失ってしまう。


2020年07月26日 | Posted in エッセイ | | Comments Closed 

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