適応型と創造型のソーシャル・マーケティング

ちょっと思いついたので備忘録がてら。こういう言葉があるかどうかは知りません。英語で言うならば、reactiveとproactiveか、あるいはadaptiveとcreativeかなというところです。

ソーシャル・マーケティングが営利企業によるものと非営利企業によるものに分かれるという場合、今日では営利と非営利の区別がつきにくくなっています。そういう意味では、何か別の視点がという感じもあるわけですが、とりあえずここでは営利企業のソーシャル・マーケティングを念頭に置いています。あるいは、今回の区分が、営利と非営利に変わるものにもなるかもと思いつつ。。

営利企業のソーシャル・マーケティングとしてしばしば事例に挙がるのは、アメリカンエクスプレスやボルビックに見るようなコーズリレーティッド・マーケティングです。クレジットに入って買い物をするとその売り上げの一部が自由の女神の修復資金に当てられるとか、水を買うとやはりその売り上げの一部が水不足のエリアの援助に用いられるというわけです。

これらのソーシャル・マーケティングは、適応型のソーシャル・マーケティングとみたらどうかなと。すなわち、すでに寄付や支援は良いことであると見なされていて、その良いことに事業を関連づけることで、良いことの実現とともに事業の方もうまくいくように考えるわけです。

これに対して、もう一つのソーシャル・マーケティングを考えてもいいのかなと。すなわち、いまだ評価が確定していない問題(wicked problems)に対して、方向性を提示し、そのことによって自らの事業の正当性と、将来的な事業の可能性を開くような考え方です。

こちらの例としては、例えばダヴによるリアルビューティースケッチや、あるいはナイキによるキャパニック選手を用いた広告などが挙げられます。これらは極めて周到な広告活動であるとみることができますが、明らかに先の適応型に比べて攻撃的で論争的です。こうした活動を総じて創造型として捉えたらどうかなと思ったわけです。

創造型のソーシャル・マーケティングは、非営利組織によるソーシャル・マーケティングと親和性があり、典型的には「社会を変える」ことや「人々の行動変容」を目的とします。適応型のソーシャルマーケティングが、どちらかというと良いこととビジネスを結びつけて双方を実現しようとするのに対し、創造型は良いこと(と断言できるかどうかわからないまさにコーズ)により特化しながら、しかし結果的にビジネスに結びついているように見えます。

昨今流行の言葉「パーパス」というものは、可能性としては創造型のソーシャル・マーケティングに対応しそうです。この覚悟がないために、多くのパーパスの話は、大山鳴動して鼠一匹、最後はありきたりのスローガンに終わることになっています(まあ時々自分たちの価値や意義を問い直すことには意味があるので、組織的には、それだけで十分なのかもしれませんが)。

とりあえずのイメージ。

2021年11月22日 | Posted in エッセイ | タグ: Comments Closed 

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