「富士宮やきそば」ヒットへの道のり

こんにちは、3年の斉藤です。

今回のブログのテーマは「イベントのマーケティングを考える」。私の担当はB級ご当地グルメで一躍脚光を浴びた「富士宮やきそば」です。
富士宮やきそばとは、富士宮市独特の製法で作られるやきそばで、一般的な焼きそばより麺のコシが強いので歯ごたえがあります。さらに、肉ではなく豚のラードの絞りかすである「肉かす」を使い、ソースで炒めた後に鰯の魚粉をかけて食べる、という特徴があります。

富士宮やきそば学会 公式ホームページ

1-1.目的

『空洞化した中心市街地の活性化を踏まえた地域振興』
単にやきそばを売ること、業界の収益を高めることが目的ではありません。富士宮市にすでに定着しているやきそばを「ブランド化」することで富士宮市の周知性を高め、観光客を増やそうというデスティネーション・マーケティング(=特定の地域を観光目的地とし、需要を創造するマーケティング)だと思われます。

デスティネーション・マーケティングに影響を及ぼす外部要因である「自然資源」「気候」「文化」の3つについて、富士宮市を分析しました。
①自然資源:富士宮は富士山が近いこともあり、天然の湧水がとれることでも有名。さらに富士宮では高原キャベツが採れる。
②気候:高低差が3741mと、日本一高低差のある地域。
③文化:富士宮やきそばが作られ始めたのは終戦直後。当時は保冷技術と交通手段が未発達であるが故、移動中に麺が腐ってしまうという難題を抱えていた。そこでマルモ食品工業の創業者である望月氏が、ビーフンを再現しようとして蒸し麺を作ったのがはじまり。さらに老舗の「さの萬」が、当時不足していた天かすの代わりに、肉かすを使用すればさらにおいしくなると提案したことにより、肉かすを使用する製法が広まった。こうして生まれたやきそばは、安価で炒麺に似ていたので、女工や元兵士たちにとって受け入れやすいものとなった。

要するに、終戦直後という文化の背景や、地元でとれる自然資源によって生まれた富士宮やきそば。さらに、高低差で気候の変動が激しくても一年中作れるというメリットを持っているので、デスティネーション・マーケティングのツールとして富士宮やきそばは最適だと考えられます。

参考:富士宮やきそば Wikipedia

1-2.顧客

STP分析すると、
・セグメンテーションとして、まず大きく「富士宮市を知る地域内の人々」「富士宮市を知らない地域外の人々」の2つに分けられ、前者はさらに「富士宮やきそばを知る人々」「富士宮市を知っているが富士宮やきそばは知らない人々」に分けられる。
・大まかなターゲットとしては、「富士宮市を知らない地域外の人々」と「富士宮市を知っているが富士宮やきそばを知らない人々」。

1-3.顧客へのアプローチ

マーケティングミックスの分析をすると、、、
地域独特の食べ物(Product)であり、そのご当地グルメを提供するお店(Place)が分布しており、庶民の食べ物なのでリーズナブル(Price)。つまり4Pうちの3Pはすでに満たしていました。

そこで、残るPromotionのために行ったのが、『マスコミの報道を活用』です。

 ・コンセプトとパフォーマンスを分けて考える。
富士宮やきそばの出張サービスに関しては、コンセプトは富士宮やきそばの普及活動であるが、パフォーマンスは「ミッション麺ポッシブル」とし、3地域のやきそばの食べ比べイベントは「三者麺談」といった感じに。
・「タイミングに、C調に、無責任に。」
マスコミは意味斬新な情報に反応しやすい、という特徴を踏まえ、取材時にはパフォーマンスについて「言葉の力」を重要視する。特に、マスコミにも消費者にも受けがいいC調(=一見馬鹿馬鹿しくて軽い)を利用する。サービス・エンカウンター(=顧客がサービスに出会う場所や時間のこと)でC調を取り入れることでより消費者も注目し、受け入れやすい。
・他地域との共同企画。
富士宮市制60周年に合わせて、同じくやきそばで町おこしを行う秋田県横手市と群馬県太田市との「三者麺談」や、北九州市の「小倉焼うどん」との食べ比べ対決「天下分け麺の戦い」、「B-1グランプリ」の開催。
・大手旅行会社との提携。
「麺財符」という食事券や「麺税店」といったC調を盛り込んだ「ヤキソバスツアー」などの、バリエーションを持った格安のバスツアーをJTBやはとバスなどの旅行会社に提案。

富士宮やきそばの関連業界や地域にもたらしている経済効果は非常に大きいです。また、ボランティアとして行っている活動なので、ノルマや業務に対する計量的な責任がありません。さらに、地元地域の富士宮焼きそばを取り扱う事業者からは商標使用料=ロイヤリティを徴収しないので、エンパワーメント(=現状の状況に応じて従業員に権限移譲すること)をもっています。事業に携わる者や地域の事業者、行政にとっても特別なリスクなしでプラス効果だけを得られる「WIN-WIN」という関係が成り立っているので、インターナショナル・マーケティング(=企業が自社の従業員を対象として努力すること)も自然と行われていると思われます。

一昔前までは「B級ご当地グルメ」などという言葉もあまり浸透していませんでした。そんな中、資金のないボランティアとして始まった活動が実を結び、今では全国に広まった「富士宮やきそば」。地元の人々の富士宮への思いが、大きな成功への第一歩につながったのかもしれませんね。

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