入口か、収集欲か。

こんにちは。3年の小林です。

僕は昔から漫画を読む事が好きで、以前もこのブログで「少年ジャンプ+」に関する投稿をさせて頂きました。という事で、今回もそんな漫画に関わる事例を取り上げたいと思います。

雑誌等に連載されている漫画は話数が溜まると、下図のような1作品単独で刊行される「単行本」という形で再度世に出ます。皆さんが漫画と聞いてイメージするのも一般的にこの「単行本」が多いかと思われます。しかし、漫画が刊行される形態には単行本以外にも多様な形態があり、今回はそんな中の「文庫版」「完全版」について単行本との特徴の違いなどについて比較しながら、出版社が漫画作品をどの層に向けどの形態で刊行しているのかについて考えていこうと思います。

図1.「単行本」の例

 

まずは、文庫版です。

図2.「文庫版」

文庫版の特徴は、①その名の通りサイズが文庫本の規格で単行本よりも小さい事、②1冊当たりのページ数が多く、単行本に比べ少ない冊数で刊行される事、③単行本よりも価格が安い事が挙げられます。これらの特徴から、文庫版は単行本に比べた「手軽さ」が売りになっていると考えられ、『ハイキュー!!』『バクマン。』等の大ヒット作品から世間的な認知度がそこまで高くはない作品まで、非常に多岐に渡る作品がこの形態で刊行されています。この文庫版のターゲットは「中々家でゆっくりマンガを読む時間は取れない」「冊数や値段の関係上単行本を揃えるにはハードルが高い」と感じている、まだその作品に対する購買行動をあまりしていない層にあると考えられます。

 

次に、完全版です。

図3.「完全版」

完全版は冊数が少ない事以外は文庫版と正反対の特徴を持ちます。サイズはA5版程あり、価格も1000円前後と単行本の倍以上の値段になっています。そうした特徴に加え、完全版が他の2形態と異なる部分が「カラーページの掲載」です。多くの作品の完全版で、連載時にカラー掲載であった話を中心に1冊当たり1~2話がカラーで掲載されています。また、これは文庫版も同様ですが表紙が単行本と異なる描きおろしデザインになっている事も別形態としての魅力になっています。これらの特徴から、完全版が刊行される作品はかなり大ヒットを記録したものばかりで、ターゲットは元々単行本を所有していながらコレクション欲がある、その作品のファンと呼ばれる層であると考えられます。

 

以上をまとめると、文庫版は単行本を購入する事に障壁を感じている関心がやや低めの層への「手軽な入口の提供」、完全版は作品への関心が元々高いファン層に向けた「新たな特別バージョンの提供」を目的に刊行されている事が見てとれ、通常版である単行本を含め出版社のしっかりとしたセグメンテーションの意識が感じられました。皆さんも各作品への自身の関心の程度に合わせた形態で漫画に触れていってはいかがでしょうか。