ドラマ『孤独のグルメ』の成功から見るパブリシティの要素

こんにちは。3年生の勝元です。

2022年10月から、ドラマ『孤独のグルメ』のSeason10が始まりました。久住昌之氏の漫画を原作とするこのドラマは、個人事業主の中年男性が仕事の合間に立ち寄る飲食店での食事風景を描いたもので、ドラマで取り上げられる飲食店が実在することから、そのほとんどに足を運ぶ熱心なファンもいます。しかし身も蓋もない言い方をすれば、ただ中年男性が食事をするだけのドラマです。人によっては「何が面白いの?」と疑問に思うかもしれませんが、これがSeason10まで続く人気を博しています。

以降、「なぜ『孤独のグルメ』は人気なのか」について考えるとともに、「『孤独のグルメ』による飲食店への経済効果を、他のマーケティングでも活用できないか」を検討していきます。

『孤独のグルメ』の楽しみ方は人それぞれです。中でも、感想を調べているといくつかのパターンが見て取れます。一つ目は、先述の通り「孤独のグルメを見て、実際にその店に足を運んで同じ料理を食べてみる」という楽しみ方。ドラマが飲食店にとってパブリシティの役割を担い、最もその効果を発揮していると言える楽しみ方です。二つ目は、実際に店を訪れるほどではないが、「主人公の食事を疑似体験する」楽しみ方。あとは「何も考えずに見る」「何か作業をする際BGMとして流す」といった楽しみ方もあるようです。

これらの楽しみ方を実現する『孤独のグルメ』の魅力は何でしょうか。

『孤独のグルメ』の一番の特徴は、やはり主人公の独白でしょう。劇中で食事をする主人公は、注文を決めるまでの葛藤や食事が用意されるまでのワクワク感、味・食感の感想など、細かい思考の推移を非常に情緒的に語ってくれます。「孤独のグルメ 名言」で検索すれば、視聴者が各々まとめた「食事中の主人公の好きなセリフ」が大量に見つかるでしょう。ただ「おいしい」と言うだけであったり、(少し現実味がないほど大袈裟に)美味しそうな演技をしたりというわけではなく、主人公はあくまで淡々と食事をしますが、モノローグではおおはしゃぎです。確かに「美味しそう」なのに、「それってどんな味だろう」と想像させる余地があり、実際に食べてみたくなる。独特な表現は大きな魅力です。

さらに、演者やスタッフなど関係者が「食事好き」であることも大事な点です。ドラマで立ち寄る飲食店はスタッフが地道に足で探すため、ロケの時期はスタッフの体重が増えてしまうとか。ドラマ本編後には原作者が実際にその店に行って酒を飲みながら食事を楽しむコーナーが欠かさず設けられていたりと、食事に真剣に向き合って制作していることが視聴者にも伝わることが、劇中の食事シーンの魅力を引き上げているように思えます。

その他、『孤独のグルメ』の特徴といえば、人間関係の発展や人物の掘り下げ、ストーリー性が希薄で、どの話から視聴をしても楽しめることが挙げられます。先ほど紹介した三つ目の楽しみ方である「何も考えずに見る」「BGMとして流す」を実現するのがこの要素と言えるでしょう。

『孤独のグルメ』人気の秘訣、あるいは「『孤独のグルメ』がパブリシティとして飲食店に経済効果を与え得る要因」が、①PRする上での表現力と、②宣伝媒体そのものの熱量が感じられることであるならば、それを「飲食」以外にも応用できないでしょうか。こう考えると、私には一つ心当たりがあります。前回私がこのブログで紹介した「志摩スペイン村」がまさにそれでした。あるVtuberが、志摩スペイン村が大好きだと言う熱量を露わに、抜群のトークセンスで志摩スペイン村について語る。その動画を見たことをきっかけに、実際に志摩スペイン村へ行ってみたと言う人は少なくありませんでした。私も行きました。楽しかったです。交通の便だけもうちょっとどうにかなりませんかね。

閑話休題、そもそもパブリシティというもの自体が、マーケティングをしたい企業側にとってコントロールの難しい広報活動であることは大前提としても、①表現力と②熱量という要素は広報にとって重要であると言えるでしょう。特に前者は、目に見えづらく訓練で上達しづらい要素であるせいか、軽視されがちな気がします。ペイドパブリシティにしても、「自社製品に興味のある人がよく見るコンテンツだから」「この人は自社製品に高いロイヤルティを持っているから」という理由で広告塔を選ぶよりも、「自社製品の魅力を伝えるだけの表現力があるか」を重視した方が、効果的な広告につながるかもしれません。それこそ、テーマパークに全く興味のなかった私がまんまと志摩スペイン村を訪れたように。フェイクニュースや不安定な情勢、広告ビジネスの急増により、メディアの信用度が残念ながら下がってきている現状だからこそ、広告内容を信用できるか否かを一足飛びにして「試してみたい!」と思わせる表現力の重要度は増しているように思えます。

後期に突入して、私たちも実践的なプロジェクトに取り組むことになります。どのようにPRを行うのか、柔軟な発想を大事に臨みたいと思います。

ちなみに、つい先日『孤独のグルメ』で紹介された「よしの食堂」は、都立大最寄りの南大沢駅から2駅で行くことができます。ドラマの視聴とともに、興味が湧いた方は是非足を運んでみてください。

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