異世代のマッチングで社会に多くのメリットを

こんにちは、3年の池田です!

突然ですがみなさん、「異世代ホームシェア」を知っていますか?

異世代ホームシェアとは、高齢者が若者に自宅の一室を無償・あるいは低価格で提供する代わりに、若者の居住者は高齢者と夕食を共にするなどのルールを守って暮らすという取り組みです。

この異世代ホームシェアは1990年代後半にスペインで始まり、その後2000年前後でフランス、オランダなどのヨーロッパ圏に広がりを見せました。特にフランスは、2003年に猛暑により独居高齢者を中心に約15000人もの人々が熱中症で亡くなったという事件を機に活動が活発化し始めました。
今回特にフランスの事例を取り上げ、その効果と、日本においての異世代ホームシェアについて話していきたいと思います。

まず、フランスの異世代ホームシェアの内容について詳しくご紹介します。この取り組みはフランスのNPO法人のLa Paris Solidaire(パリソリデール)が発足し、シニアと若者のホームシェアを推進するために始まりました。今回紹介するのは特にパリソリデールの中でもensemble2générations(以下、E2G)という団体の取り組みについて話します。

この事業の目的は、金銭面を気にする学生と手助けを必要とする高齢者をマッチングすることで、どちらのニーズも満たすだけでなく、共同生活を通じて他者への心遣いの中に喜びを見出してもらい、2世代間の絆を育むことされています。

対象となる若者の条件は、18~30歳で、住居を探しており、慎み深く熱心な性格で、進んで手伝いをし、お年寄りに親近感を持っていることと定義されています。一方、対象となるシニアの条件は、60歳以上で、空き家部屋があり日常生活の中で誰かの存在と手助けを必要とし、若者に移住先を提供できる意欲があることと定義されています。

学生は申し込みをする際に、自分の経歴、学校の場所、入居希望の期日などに合わせて候補となっている受け入れ先の中から希望を出すことができます。その後E2Gのスタッフがシニア宅を訪問し、推薦する学生の経歴を一緒に確認し、どのような手伝いをしてもらいたいのかを決めていきます。

最適なマッチングが決まったら、両当事者に契約書などが送られます。入居前に対面することも可能になっています。また、入居後もE2Gは定期的に追跡調査を行い、契約の継続や解除の判断を行います。

特徴的なのは、シニアの希望に応じて「無料住居」、「経済的住居」、「連帯住居」の3つの形式を用意している点です。それぞれの形式の特徴は以下の通りです。

会費として、「無料住居」と「経済的住居」は390ユーロ、「連帯住居」は300ユーロを毎月払うこととなっています。
金額に応じて3つの形式が設けられていることは、金銭面が気になる学生にとっては、とても助かるのではないかと感じました。

また、この取り組みによって、両当事者は大きなメリットを得ることができます。

【シニアのメリット】
①空いている部屋を貸すことで収益を得られる
②若者と一緒に住むことで、新たな知識や経験を得られる
③防犯の面で安心である
④若者の手助けとして社会貢献できる

【若者のメリット】
①比較的低廉な賃料で、設備や立地など、質の高い居住空間を借りられる
②一人で住むより京都らしい知恵や知識を得られる
③外出時、帰宅時に声をかけてもらえることで精神的安心感を得られる
④シニアを見守ることで社会貢献できる

また、ホームシェアを体験した方の感想として、85歳の男性の、「若者との共同作業を通じて自分が若返ったように感じた」という声や、学生の「自分にとって素晴らしい経験で、将来に希望が持てるようになった。礼儀作法も学ぶことができた。」との前向きな声が上がりました。

この取り組みは、世代の違うターゲットの相互のニーズを満たした、上手いマッチングサービスだと感じました。

では、日本ではどうなのでしょうか。正直なところ、私は日本でこのような取り組みが行われているという情報をあまり耳にしたことがありませんでした。しかし調べてみると、日本でもいくつかの場所で「異世代ホームシェア」が行われていました。しかし、フランスでは2017年時点で2400人もの学生に住居を提供するという実績があるのに対し、日本ではどの取り組みもあまり成功していないというのが現状でした。

要因は心理的要素と物理的要素の2つが考えられます。
心理的要素は、高齢者をサポートするのは本当の家族の仕事であるという考え方が根強いということです。特に都市部では近所付き合いというものすらなくなりつつあるため、他人が高齢者のサポートをするという考えが薄いということが挙げられます。
物理的要素は、日本はホームシェアをできるほど住居が広くないということです。アメリカと比較すると日本の住居は半分ほどの大きさであり、そもそも人を住まわせられるスペースがないということが挙げられます。

しかし、こうした課題はあるものの、この取り組みを成功させられれば、両当事者だけではなく、導入したまちにもたくさんのメリットがあると考えます。例えば、空き家化を防げたり、地方においては若者が増えることによりまちが活性化し、活気が戻ったりするということです。様々な障壁はありますが、今後国をあげてこうした取り組みを行い、現在直面する少子高齢化に付随する問題の解決に繋がればいいなと思います。

長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

【参考文献】
若者と高齢者、2世代間の絆を育む――フランスの異世代ホームシェア/藤谷和廣 – SYNODOS
異世代間交流が盛んな高齢者×学生ホームシェアという住居共有の実現を考えてみた〜実例と課題〜 | マムレ日記 (christiansths.com)

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