第2章デジタル経済化と消費の変化

(3年・金岡)本章は、デジタル経済化の進展によって私たちの消費行動がどのように変化しているのかを、「対象」「目的」「様式」「場」という四つの視点から整理した内容である。消費というと単に商品を買う行為として捉えられがちだが、本章ではより広い社会的・文化的行動として位置づけ、その構造変化を明らかにしている点に特徴がある。

本章では大きく四つの変化が紹介されている。①消費における「対象」の変化、②消費における「目的」の変化、③消費における「様式」の変化、④消費における「場」の変化である。これらはいずれもデジタル技術の発展と深く結びついており、互いに影響しながら現代の消費行動を再編している。

①消費における「対象」の変化では、有形財と無形財の境界が揺らいでいることが論じられる。従来はCDや本、DVDなど手に取れる物が消費の中心であったが、現在では音楽配信、動画配信、電子書籍、アプリといったデジタル財が主要な対象となっている。その一方で、旅行や食事、イベント参加など本来は形のない経験も、SNSへの投稿や写真・動画の保存によって可視化され、擬似的に有形化されるようになった。こうしてモノとコトの境界が曖昧になり、消費対象そのものが変容している。

②①は消費の「目的」にも変化をもたらした。消費における「目的」の変化では、まず「所有から利用・経験への重点シフト」が起きている。かつては製品を所有すること自体に価値があり、それが豊かさや満足感の象徴でもあった。しかし、サブスクリプション型サービスの普及により、消費者は所有しなくても必要な機能やコンテンツを利用できるようになった。その結果、物を持つことよりも、どのような経験をしたかが重視されるようになっている。さらに、「デジタル空間でのアイデンティティ構築の重視」も重要な目的となっている。SNS上では「自己表現と承認欲求」が密接に結びついており、投稿へのいいねなどの反応や評価があることにより、デジタル空間での自己表現と承認獲得は重要な消費の目的となっている。また、オンラインコミュニティや推し活動などを通じて「他者とのつながり」を求める動きも強まっている。消費は他者とのつながりを築く手段にもなっている。

③「様式」の変化として、アクセス・ベース消費と一時的所有に注目している。アクセス・ベース消費とは、製品やサービスを所有せず、必要な時だけ利用する形態であり、動画配信サービスやカーシェアなどが例として挙げられる。一時的所有とは、商品を購入して一定期間利用した後、フリマアプリなどで売却することを前提とした消費である。これらはいずれも永続的な所有を前提とせず、より柔軟で効率的な消費行動として広がっている。

④「場」の変化では、消費が行われる空間そのものが現実空間からデジタル空間へ拡張していることが説明される。1990年代のECサイトによる選択・購買の場のデジタル化にはじまり、2000年代以降はSNSによるコミュニケーションの場が形成された。さらに2010年代以降は、ゲーム空間やメタバースなど生活全般を含む場へと広がりつつある。今日では、商品を探し、比較し、購入し、共有し、評価するまでの一連の行動が同じデジタル空間で完結するようになっている。

本章はデジタル経済化による消費変化が単なる利便性向上にとどまらず、人々の価値観やアイデンティティ、社会関係そのものを変えていることを示している。

本章は、自分が知らずのうちに、ごく身近な消費行動を通して社会が大きく変化していることに驚いた。消費に注目することで、次世代の消費行動がどう変化していくのか考察したりするのも楽しいと考えた。