第9章 つながる消費 (森)

第9章 つながる消費

(3年 森)

本章はネット上のコミュニティ、特にブランド・コミュニティに着目し、デジタル化の進展によって消費者と企業の関係がどのように変化してきたのかを整理している。これまで消費は比較的個人的で孤立した行為であったが、インターネットの普及により掲示板やSNS上で情報交換が行われるようになり、消費者同士が相互に影響を与え合うことができるように変化した。また企業にとっても、消費者同士のやり取りを直接観察できる環境が生まれ、「企業―消費者」だけでなく「消費者―消費者」という新たな関係性が重要になった。

こうした変化は段階的に進んできたとされている。

黎明期には、ブランドを中心に強い結びつきを持つコミュニティが形成され、ブランドに愛着を持つ積極的な消費者が主に活動していた。この時期、企業はコミュニティを主導する立場ではなく、イベントの実施やブランド体験の提供を通じて、消費者同士の交流を支援する役割を担っていた。また、こうした体験を通じてブランドへのロイヤルティが高まっていったと考えられる。

その後の混乱期には、ソーシャルメディアの普及やスマートフォンの登場により、消費者は常につながる環境に置かれるようになった。その結果、情報の拡散や炎上といったリスクが現れ、消費者の発信行動は慎重になった。このような状況に対応するため、企業は消費者の参加を促すマーケティング施策を展開し、公式アカウントによる双方向的なコミュニケーションなどを行うようになった。

さらに成熟期においては、コロナ禍によるデジタル化の加速もあり、消費者は複数のコミュニティに所属し、それぞれで異なる関係性を使い分けるようになった。その中で深く関わるコミュニティと、軽く関わるコミュニティが共存する状態となった。これに対し企業は、それぞれに対策を行い、資金援助や情報提供を通じて関与する「協力的参加」、企業への関与を自己表現に結びつける「自己呈示」、そして浅いつながりには情報収集や問題解決を目的とした「道具的なつながり」といった、多様な関係構築のあり方を提示している。

また、消費者が複数のアカウントを使い分けるなどする中で、企業は自発的に形成される「界隈」を見出し、それを支援することが重要であると指摘されている。

以上を踏まえると、本章はブランド・コミュニティを通じた企業と消費者の関係が、単なる感情的なつながりから、目的や関わり方に応じた多様な関係へと変化してきたことを示している。そして現代では、消費者の自己表現や効率的な情報収集といったメリットを提供するだけでなく、コミュニティの一員として消費者の声を理解する姿勢が求められると述べている。また、企業自身も、どのような消費者とどのような関係を築くのかを戦略的に選ぶ必要があるとされている。