消費文化というか、一種の社会現象だろうと思うのですが、少し興味を持ったのでまずはネットで下調べから。
昨今、LINEをはじめとして、スタンプが流行っていると思います(いまさら古い?)。Facebookやiosなどにも搭載されてきましたので、世界的な傾向であるとも言えるのかもしれません。しかも、特にLINEの場合、ここから収益が上がっているというのがすごい。前にも
LINEのビジネスモデルで書きましたが、コミュニティのビジネスモデルとしておもしろい。
考えてみると、こうしたスタンプは、もともと絵文字や顔文字として広く知られていたものをベースにしています。絵文字に関しては、すでにデコメールの時代から課金の仕組みが生まれつつありました。スタンプは、こうした流れの発展系だといえそうです。一方で顔文字については、課金の仕組みをつくりだすには至りませんでした。絵文字の前身とみることができるのかもしれません。
とそんなことを考えていて、ネット上で興味深い記事をいくつか見つけました。これらから時系列的に古い方から並べ替えると、次のようになるようです。
1986年 パソコン通信 顔文字 ^_^
1993-5年 ポケベル 絵文字 ♥︎
1998年 i-mode 絵文字 176種類
2003-4年 デコメ
2005年 のまネコ事件
2011年 スタンプ
1986年に顔文字が始めて登場するという点については、その創作者のホームページがあります。「1986年6月20日 に 若林泰志 が当時のパソコン通信「アスキーネット」の電子掲示板で使用したのが最初。」
その後、顔文字の利用は急速に広まったようです。海外のスマイリーマーク:-)でなかった理由は諸説あるようですが、個人的には技術要因を考えておくのがいいように思います。シフトJIS、あるいは2バイト文字ですね。そう考えると、以降の歴史を同じ視点で説明できそう。
パソコン通信に遅れること約10年、日本ではポケベルがブームになります。おそらく、このブームが絵文字ビジネスの重要な基盤になっている気がします(このロジックについては、いずれ論文で)。ポケベルでは、当初は数字ぐらいしか送れなかったと思いますが、限られたコードの中に、♥︎が搭載されていました。その搭載理由はよくわかりませんが、少なくともこの♥︎が大きな意味を持ったと、後のi-mode開発に関するサイトが伝えています。大事そうなところなのでちょっと長文ですが引用させてください。
「90年代後半、ポケベルブームも末期のころ。当初は数字を表示するだけだったポケベルも劇的な進化を遂げ、NTTドコモの新サービス「インフォネクスト」ではアルファベットやカタカナ、漢字まで表示できるようになっていた。だが、この新サービスで表示できなくなったものが1つ。それがハートマークだった。当時の大手・東京テレメッセージの機種では変わらずハートマークの表示が可能で、その結果「ハートマークが表示できる機種を求めて顧客が流出する、という事態が起こった」(栗田氏)。」
この記述から、次の3点を読み取ることができます。第一に、♥︎の重要性はNTTドコモには認識されていなかったということ。第二に、文字処理の技術にかかる漢字表記の兼ね合いでこのマークがなくなったこと。第三に、結果として顧客流出が起こり、後のi-modeではむしろ絵文字の重要性が認識されるに至ったこと。さらにこのとき、すでに先行してネット上で存在していた顔文字もまた、ケータイのテンキーで打てないのならば絵文字に取り込めばいいと考えたといいます。「いわゆる顔文字((^_^;)のようなもの)は当時からあったが、ケータイのテンキーでこれを打つことはできない。」
携帯に搭載された絵文字は広く利用されるようになり、さらにその発展系としてデコメールが使われるようになります。絵文字はデフォルト搭載だったと思いますが、デコメールは有料のパッケージもありました。このデコメールが大きくなると、今のスタンプのようなものになるのでしょう。この背景にはやはり、技術要因を想定することができます。デコメールがでた当初は、そのファイルサイズを危惧する声もありました。しかしそうした問題が解決される中で、よりグラフィカルな画像の利用が進められるようになります。そういえば、もともとの絵文字は12×12ドットだったと言いますし、トラフィク自体はコードでやりとりされていました。この技術制約は、先の記事に書いてあるのですが、意匠権などの否定につながっており、結果として多くの企業が絵文字を利用、又は発展させられることになったといいます。
「実は当時のドコモの絵文字には意匠権がなく、ドコモも栗田氏自身も絵文字の権利保護をしていなかった。「申請はしたものの、12×12ドット内なら他人でも同じ表現ができる、独自性が認められない、という話になり認められなかった」(栗田氏)。」
生みの親が語る「ケータイ絵文字」14年の軌跡と新たな一歩
さて、携帯上で展開した顔文字→絵文字→デコメ→スタンプの流れは、無料から課金の仕組みがうまく構築されていきました。しかし一方で、もともとの顔文字が生まれたインターネットの世界では、そうした仕組みは生まれなかったように思います。むしろ、顔文字はネットユーザーの文化として独自の発展を遂げ、ビジネスとは対立的な関係を描くことさえありました。象徴的なのは、2ちゃんねるのアスキーアート(絵文字?)モナーと、エイベックスによるのまネコの著作権騒動でしょう。
のまネコ問題wiki
むしろ今になり、例えばfacebookが絵文字を導入するようになっているというのは今日深い点です。パソコンで生まれた顔文字は携帯へとうつってスタンプとなり、そして改めてパソコンやインターネットの世界に入り込みつつあるという感じです。後は、ここに課金の仕組みまで導入されるかどうかですが、現実的にそれは難しい気がします。技術的にみて、この手の画像はコピペできます。一方でリアルの世界で製品化しようとすれば、ネットユーザーの反発を買うだけです。ネットの世界では、どこまでも顔文字や絵文字は無料のまま、ネットユーザーの文化であり続けるのかなと思いました。いや、そもそも利用する状況が異なるのかな。
ひとまずここまで。