未来より先に動くとか?


先日子供とテレビを見ていて、何気なく流れていたCMがありました。どこかの企業広告かなーと漠然と思っていたのですが、最後に、「未来より先に動け。」の一言が。


未来より先に動け (youube)

ヤマトHD/新TVCM放映開始、テーマは「未来より先に動け。」


 

そこでうちの子が一言。

「は?未来より先に動けるわけないじゃん。動くことと未来は同時だし。」

そのとおりです。この手の表現はずっと昔から気になっていて、どう理解したらいいのかなと考えることもあったので、似たことを考えているなと思ってちょうどいい機会でした。

「未来より先に動く」とか、個人的に以前から気になっていた典型的な表現として、「未来を変える」などがあります。伝えたいことはよくわかりますが、改めて考えてみると変な表現です。うちの子がいうように、動くことも変えることも未来そのものなので、先にとか、変えるといった表現は本来合いません。少なくとも、今よりも先に動くとか、今を変える、といった形が正確だろうと思います。

二つの特徴があります。一つは、これらの表現は、速さや大きさをより引き出す比喩のような形で示されているということです。未来は先のことであったり、大きな出来事であったりするわけですので、それよりも「さらに」速く、「さらに」大きな変化をというニュアンスは強まります。それからもう一つは、このように示すために、未来を一つの確定するであろう事実としてみなすということです。特に未来を変えるという場合には、変えられるべき未来が確定していることになります。それはおそらく現在の延長線上にある予測可能でほぼ確実に訪れるであろう未来であり、それを変えようとしているわけです。例えば、日本はこれから少子高齢化がますます進むという場合、それはほぼ確実に訪れるであろう未来であり、それを変えるという表現は、それなりにありえるものとなります。

未来には、二つあることがわかります。まずは近め目の未来で、それはほぼ確定したものとみなせる。それは変えることや、あるいは、それより先に動こうとすることができる。もう一つは、もっと先の未来で、それは確定していない。動くことそのもの、変わることそのものである未来がある。CMは前者と後者を分けて議論することで、後者のスピード感を強調しており、うちの子(と僕もおそらく)はシンプルに後者だけで捉えている。

もちろん、例えば明日の遠足の日に雨が予想されているとして、その雨を回避しようとしててるてる坊主を作るという時、うちの子も未来を変えようとしています。そのことについて、ほぼ確定している未来を変えようとしているよ、ということはできます(し、てるてる坊主の効果はもっと疑わしい)。どうも一般的にみて、未来について僕たちは二つのタイプを使い分けているような気がします。ほぼ確定していると思う未来と、まだ確定していない未来。さらにいえば、時間はデジタルで一瞬一瞬今が終わって未来に向かっているというよりは、アナログな感じである程度濃度をもって広がっていく感じもあります。

で、だからなんなんだということで、大体いつもここでよく分からなくなっていました(笑。以前は、ここからこの感覚を過去に向けてみるとどうかなと思ったり。古いものは固まっていくということで、過去の確定も濃度があるのかなとか。しかし改めて考えみると、二種類の無限をどう考えるということなのかもと思ったりする次第です。

結局自分では答えが出ないので、うちの子にもう一回聞いてみようかと思ったのですが、既に覚えていないようで「?」でした。こんなこと、あれこれ考える必要も暇もないよということかなと。。。


2020年12月20日 | Posted in エッセイ | | Comments Closed 

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