3つの研究テーマを並行する

以前、研究が止まったら翻訳するという石井先生の話を紹介しました。これに合わせて、今回は、田村先生に以前教わった3つの研究テーマを並行するという話をと思います。これは小川先生の授業で講演いただいた時の話だと記憶していまして、同じ機会に、嶋口先生からは海外ではメジャーとマイナーの履修が必要とされると聞き、複数の領域をテーマに持つことが大事なのかもと思ったのでした。

修士の頃は、当然のことながら一つの研究テーマを進めています。すごいできる方は違うかもしれませんが、普通は、多分、まずは一つの論文を書くことを目指します。無事に博士に上がれたとしまして、博士の頃になると、少し研究にも慣れてきて、いくつかの研究テーマを取り扱うことが可能になります。このころから、積極的に、3つぐらいの研究テーマを考えながら研究を進めることが良いということです。それは一方で負荷にもなりますが、これらはポートフォリオとして機能し、結果的に研究を止めずに済むことにつながるといえます。

天才の方はさておき、普通は研究に詰まるものです。途中で無理だなと思ったり、嫌だなと思ったり、飽きてしまうということが起こり得ます。この時、他に選択肢がなければ、研究全体が止まることになります。修士や博士の時はともかくとしても、教職についている場合にはこのストップは決定的でもあります。学務や社会活動、あるいは家庭も含め、研究以外にもやらなければならないことは山のようにあります。一度止まってしまった研究に戻ることは、なかなか難しいでしょう。また、戻らなくても、それはそれで意味のあるやらねばならないことも多いです。その意味では、この方法は、天才の方向けの方法ではなく、むしろ一般向けの方法であるように思います。

一つの研究が止まったら、別の研究を進める。それが止まったら、また別の研究に戻る。3つの研究を同時並行で全て行うのではなく、選択肢として用意しておくこと。おそらく、これらの研究はより狭い範囲で3つでもいいし、広めにとって3つでも良いのだと思いますが、個人的には、メジャー1つとマイナー2つといった感じがいいように思います。単に広い知識を必要としているのではなく、複数の研究テーマの取り扱いを可能にしているように感じます。

ちなみに自身のポートフォリオでいくと、博士課程の頃は、方法論、歴史、快楽的消費と思っていました。これらは修士論文で取り扱ったテーマを分割しただけのものです。もう少し経つと、方法論と歴史はくっつき、思いがけずネットコミュニティのような話が新しいテーマになってきました。方法論、快楽的消費、それからネットぐらいの感じでしょうか。就職すると、快楽的消費とネットがくっつき、今度は新たに戦略がテーマになってきました。あとはいろいろ増えたり減ったり、くっついたりしながら、最近は、方法論系、デジタル系、それからソーシャル系に分けられる気がします。これらは相互に結びついているところもありますが、基本的には相互に無関係に作業できるつもりです。

あとあの時の講演で印象に残っているのは、きみら100万円ぐらいはいつでも研究に使えるように手元に持っておけよ、でした。これは今も無理かも。。


2022年10月31日 | Posted in エッセイ | タグ: Comments Closed 

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