久米 郁男「原因を推論する — 政治分析方法論のすゝめ」、有斐閣、2013。

※書評を書くためにはまずは本を読まないといけないので、難易度は高いところ。率先しまして一つ。先日たまたまtwitterで流れていたので注文してみました。

われわれとは分野の違う政治学ではありますが、経営学や商学、あるいはマーケティングと同じような研究方法の議論があったことがわかります。一番平たい言い方をすれば(誤解を恐れず!)、定量的調査と定性的調査の対立ですね。

本書の後半では、定性的調査の可能性についての研究がいろいろと紹介されています。「少数事例を扱い、その緻密な記述を特徴とする事例研究は、必然的に「原因」と「結果」に関する仮説の検討を行なわない論理の曖昧な研究になるのではない(221頁)」というわけで、例えば仮説演繹による条件の固定であったり、決定的事例分析(反証)などが紹介されています。このあたりはわれわれも学ぶところが多いです。

個人的には、定性的調査なり事例研究が意味を持つのは、一つには、当の「原因と結果」の一般性が、現実には受け入れられたり受け入れなかったりするという点を考察できるからかなと思います。ただ、それは結局、「原因と結果」に対するコントロール変数を新しく見つけている探索的な過程かもしれません。

そこでもう一つとして、定性的調査や事例研究では、当の「原因と結果」の一般性が現実に出来上がっていったり失われていく点を考察できるという点も重要かと思います。社会における法則性は、自然法則とは異なり、選択の余地があります(これは一つ目に対応)。と同時に、やはり自然法則とは異なり、生成と消滅がありえます。この後者の点は、定性的調査や事例研究、というよりは歴史研究として、独特な価値を有するのかなと思う今日この頃です。

 

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