観察法によるニーズの発見

こんにちは、上川です。今回のブログのテーマは観察法(オブザベーション)ということで、『1からの商品企画』(碩学舎)の第3章「観察法」を読んで水越先生から出された、4つの点について考えます。

  まず初めに、「観察法」について。

  これは、アンケートなどの統計的な手法に頼らず、人々を観察することから使用している人も気づいていない潜在ニーズを引き出し、それまで誰も発見できなかった視点から商品企画を行う手法です。「自分ではない誰か」の求めているものを見つけ出し、競争力のある発想の手がかりを得るために使われます。

 
  この本の中では、IDEO社のATMについての観察法が例として挙げられています。観察を行うことでATMの利用者が後ろに並ぶ人の存在を気にしていてパーソナルスペースを求めていること(潜在ニーズ)がわかりました。そこでIDEO社は、利用者や銀行の担当者へのインタビューや実際に自分たちでATMを操作することでは浮かんでこなかった、バックミラーをつけるというアイデアを見つけ出しました。

  この他にも、ATMの設置方向を90度回転させることで安心してATMを操作することができるようにしたり、窓口の人に残高を確認してから一緒にATMを操作してもらうというような、ある種極端な利用者からも話を聞くことで、シンプルで機械の中で行われていることを視覚的にフィードバックするという工夫を行うことができました。



  そして、この章の終わりに、自社製品の購入者から設置場所の写真を集め、「床に置いている人が一番多い」という事実を発見したことを、「観察法」によるものという会社が出てきます。

  この会社のどこが間違っているかというのが、先生からの1つ目の設問です。

  この会社は、写真を集めそれらのデータを統計的に集計し、「平均的」な人々の「傾向」を掴んだだけです。これでは観察法とは呼べません。

 次は、統計的な事実に従っても、潜在ニーズをうまく拾えない理由です。統計調査では、平均的な値が好まれ、「外れ値」は除外されてしまいます。これでは、他社も気が付いているような点にばかり目がいってしまい、「極端」な例であり、他社が目をつけていない「潜在ニーズ」に気づくことは難しくなります。
では、統計的な事実に従ってしまうと、潜在ニーズをうまく拾うことはできないのでしょうか。私は、そのようなことはないと考えます。

  アンケートなどであっても、顕在化していないニーズに対する仮説を立て、それに関する設問を作ることで、観察法とは異なるアプローチの方法ではありますが、その仮説が統計的に有意であると証明されれば、それは消費者自身が気づいていない潜在ニーズを探し当てることになると思うからです。

  最後に、観察法を用いることで結局何ができるかについてです。

  観察法を用いれば、自分では当たり前すぎて気づくことのできなかったことや、自分では全く思い浮かばなかったような問題点に気が付くことができます。

  また、観察を通じれば本人ですら気づいていない思いに焦点を当て、人が上手く言い表すことのできない欲求を引き出すことができるのです。「不便だとは思わないが、どこか使いにくい」という点があったとして、その点に気づき改善することができれば、競争力のある商品を生み出すことが可能となります。

 

ニーズを調べるためには、たくさんの人の要望を知ることができるアンケートなどの方法が良いと思っていましたが、消費者が気付いているようなニーズに応えようとする企業はたくさんあります。そこで、たとえ極端な例であっても、そこから問題点を見つけ出し解決する方が、結果的に多くの人に求められることになるのだと思いました。

 

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