値切れる商店街

こんばんは。3年の丹羽です。 買い物といえば、定価で買うことが一般的です。いくら商店街とは言っても、値切るなんてハードルが高い…と感じる方も多いでしょう。しかし、直接お店の方とやり取りをしなければ商品を買うことが出来ない商店街があります。それが大阪の新世界にある、Wマーケットです。

 Wマーケットは、「シャッター街で遊ぼう」をコンセプトとして、新世界のシャッター街化してしまったとある商店街を活気づけるために週末にのみ開かれているマーケットです。商店にある品物にはいずれも値札がなく、「これなんぼ?」と値段を聞くところから取り引きをしなければなりません。一見するとむしろ面倒に思えますが、マーケティング的にみると面白い点がありました。

まず、この面倒なやり取りの意義です。値切りの交渉以前に値札を付けないということにはどのような意義があるのでしょうか。

値札を付けないと、欲しいと思った商品を買うには嫌でも1度店員さんと話をしなくてはいけません。お店の方からすれば、提示した値段をつけた理由を必ず説明しなくてはなりません。このやり取りの中で、購買者はその製品やお店の方の価値観や背景を知ることになります。これにより購買者は、例えばコーヒー1杯にしてもそこらの自販機で買うのとは異なる「愛着」を持つようになります。本来なら低関与(関心)になりがちなジャンルの製品に対する関与が強まったり、「この店員さんの淹れる」コーヒーというようにほかの単なる消耗品とは異なる価値を持つ商品として差別化が図れます。

また、苦労して手に入れた製品ということで、取引の事後にも愛着が生まれ、満足感が上昇します。

更に、1度話を聞いてしまったり、あるいは値段交渉をしたりする中で申し訳ないという気持ちが湧き、購買に繋がりやすいという心理的アプローチの側面があると考えます。最初はふっかけた値段を付けておき、値切らせて恩義を感じさせ、購買につなげるという、「ドア インザ フェーステクニック」や、愛着を持った店員さんの品物はいいものである、と思ってしまう「ハロー効果」 、話を聞いてしまうとそれに矛盾しないように買いたくなってしまう、一貫性に基づいた「フットインザドア」というテクニックも使われているのかも知れません。

更に面白いのは、現金も使えるこのマーケットに用意されている、現金同様使える金券です。これを買うと、「端数カッター」というチケットが手に入ります。これは文字通り端数を切り落としてくれるチケットで、何回も使えます。どこまでを端数とするかさえ店員さんとのやりとりの中で決めます。こうしたチケットで店員さんと話し合う時間を作り出す狙いもあるのでしょう。更にリアルクラウドファンディングカードというものも用意されており、これを1番多く集めた露店は、開店資金としての500万円を手に入れられます。これにより、お店からはよりサービスをしようという心理が、客には自分がそのお店を支えているという自覚が生まれ、1層愛着を持つようになります。

これらの要因からか、今Wマーケットは大人気になっています。私も今度大阪に行く時に行ってみようかと思っています。

出典

Wマーケット公式ホームページ(http://w-market.jp/)