環境問題を活用する

こんにちは。3年の勝元です。

私事ではありますが、昨年度末に電子書籍を購入しました。これから先も書籍は電子を中心に購入するつもりで、専用の端末も奮発して購入しました。それまで読書は紙派だったのですが、管理が甘く本棚に小さな虫が湧いてしまい、徹底的に湧き潰しをしたのち紙の書籍の購入は控えようと心に決めました。あまり読み返さない本は処分することにしましたが、実家を出た兄が家に残して行った本も合わせると相当な量で、父が車で古本屋まで2〜3往復してようやく片付けが終わりました。

本に限らず、あらゆるものを維持・処分するにはコストがかかります。しかし大半の消費者は購入する時に維持費・廃棄コストを重大に考えてはいないでしょう。

そのため商品を売る側も、「捨てやすさ」を売りにすることは多くありません。「廃棄費用が1万円安くなる」商品と「1万円安く売られている」商品だったら、後者を選びたくなるのではないでしょうか。

しかし最近、消費者が求めていなくても「捨てやすさ」の重要度は上がってきています。それは利便性の追求ではなく、環境問題への取り組みを目的としているからです。プラスチック製品の削減やリサイクル等、さまざまな企業努力が散見されるようになりました。ですが、環境問題への取り組みの多くは、消費者にとって魅力的ではなく、したがって企業にとっても魅力的ではないもののように思えます。プラスチックが削減されて、消費者や企業がどんな利得を得たでしょうか。もちろん長期的には環境問題を改善する等の利益をもたらしてくれるのかもしれませんが、意思決定主体である消費者個人にはあまりうまみがありません。どうにかして環境問題への取り組みを消費者のうまみに、ひいては自社の利益につなげたいものです。

ところで、プラスチック削減はまだしも、なぜ「捨てやすさ」が消費者のうまみにならないのでしょうか? 第一の理由は、双曲割引の心理が働くからでしょう。すなわち、「遠い将来の利益より近い将来の利益の方が大きく見える」ためです。先述の通り、企業が同じ1万円の努力で行うならば、廃棄する時に得をするよりも購入時に得をするような工夫をした方が、消費者には魅力的に映ります。したがって、もし「捨てやすさ」を売りにするならば、軽視されやすい廃棄コストを「見える化」するなどして消費者に自覚させる必要があります。(ただし廃棄コストの強調は製品のマイナスイメージを形成してしまいそうです)

第二に、「捨てやすさ」が捨てやすさとして機能していない可能性が考えられます。「い・ろ・は・す」(以下、いろはす)という商品を、ご存知でない方はあまりいらっしゃらないでしょう。自動販売機などでもよく見かけるペットボトル飲料で、潰しやすいデザインが特徴的です。捨てやすい商品の典型例のように思えますが、皆さんはいろはすを購入した際、ペットボトルを潰していますか? 1.5Lや2Lのペットボトルならばまだしも、外出先で購入して外出先でそのまま捨てるような500mLのペットボトルなど、毎回潰してから捨てているでしょうか。このペットボトルの「捨てやすさ」を実感するのは、そもそも形状に関わらずペットボトルを潰している律儀な人か、家計で大容量または大量のペットボトルを潰して廃棄する役割を担う一部の人に限られます。購入する人と捨てる人が違う場合があることや、そもそも潰さなくても捨てることができることから、購入する人にはせっかくの「捨てやすさ」が実感としてあまり伝わっていないのではないでしょうか。

対して、伝わりやすい「捨てやすさ」の例があります。株式会社バンダイによる「エコメダル」という包装です。プラスチックのカバーと台紙を固定するテープを削減したデザインで、「捨てやすい」に「開けやすい」というメリットが付随します。おもちゃでは購入者・開封者・廃棄担当者がバラバラであることもあるかもしれませんが、似たような包装の工夫は文房具などさまざまな製品に応用でき、それらは購入者・開封者・廃棄担当者が一致していることが大半です。環境問題への企業の努力が、消費者により良い形で伝わる良いデザインであると言えます。

環境問題に対する取り組みが欠かせない現代、少しでもその努力を、消費者にとって嬉しいものに変換し、自社の利益につなげていけたら良いと思います。

先週に引き続き長い文章でお目汚し失礼しました。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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