サントリー「クラフトボス」

こんにちは、3年の飯島です。今回は、第10回日本マーケティング大賞を受賞したサントリーの「クラフトボス」のヒットの要因を考えてみたいと思います。

クラフトボスとは、サントリーの缶コーヒーの代名詞でもあるボスがペットボトルに入っている商品です。2017年4月の発売以降、9ヶ月で2億4000万本を売り上げました。そんなヒットの裏側に潜む要因を考えていきます。

①クラフト感

近年、SNSが流行しており感度の高い若者の間でおしゃれさを想起させる「クラフトブーム」が来ています。クラフトとは「手作り感あふれる商品」の総称といえます。クラフト感を出すためにまず、ボトルの形状をあえて太さを出してポテッとさせることで、働く人がホッと一息できるような緊張感のないデザインにし、ぬくもりを表現しました。また、色も「クラフト」と聞いてまずイメージされるベージュ色を採用しています。ラテは、中身がベージュでブラックはラベルデザインをベージュ基調としています。また、手書き調の説明文により素朴さを出しています。このように、パッケージからクラフト感が表現されているといえます。

ソース画像を表示

テレビCMでは、ターゲットとするIT企業を描写した物語風の展開が若者の感性に訴えることに成功しました。また、クラフトマンシップについてあえて触れないことで、本格的な濃いコーヒーとの差別化を図りました。

②ワークスタイルにマッチ

「クラフトボス」は、あえて苦みやコクは控えめで飲みやすくなっています。すっきりとした味わいとすることで、ちびちび飲んでもあきないようになっています。また、500mlのペットボトルとすることで長時間デスクに座りっぱなしでもなくならない量であり、ふたを閉められるので長時間机においても衛生的です。このことが、ターゲットとするIT系のデスクワーカーのワークスタイルにマッチしたといえます。実際、これまで水やお茶を購入していた「コーヒーを飲んでいなかった層」の獲得にもつながっています。

このように、現代の働き方の変化に合わせたことと近年の「こだわり消費」のニーズにこたえたという点がヒットにつながったのだと思いました。機会があったら私も飲んでみたいと思います。

https://zaikei.co.jp/article/20180427/439456.html

https://www.suntory.co.jp/softdrink/craftboss/

https://www.sankeibiz.jp/business/news/180201/bsc1802010700001-n3.htm

WONDA TEA COFFEE ~コーヒーと紅茶の融合~

こんにちは!保科です。

みなさんは「TEA COFFEE」という商品をご存知でしょうか。525㎖で希望小売価格は160円、紅茶かコーヒーかどっちつかずな名前のこの商品は、アサヒ飲料から2018年4月に発売されました。茶葉かおるリフレッシュコーヒーというキャッチコピーで、ほうじ茶とコーヒーが掛け合わされたものです。味はコーヒー牛乳に後味でほうじ茶ラテの風味が追ってくるような感じでした。しつこい甘さはなく、すっきりとしています

ゴクゴクと飲めるタイプのコーヒーが飲料メーカー各社から販売されています。「TEA COFFEE」を発売したアサヒ飲料のマーケティング戦略を3C を使って分析したいと思います。

Customer:市場・顧客

エヌピーディー・ジャパンが提供する外食・中食市場情報サービス『CREST』によると、コーヒーは、ソフトドリンクメニュー内の比率の中でも最もシェアを誇るドリンクです。最も利用される業態はコンビニでした。近年コンビニ各社が力を入れている「カウンターコーヒー」の影響が伺えます。コンビニ市場におけるコーヒーの主流は缶とカウンターコーヒーで、30~50代の男性の比率が同世代の女性委に比べて高くなっています。コンビニで手軽に買えることと、カフェチェーンのテイクアウトと比較して割安なことが人気の理由である。また飲まれるシーンで多いのは、買ったその場で飲むことより、車内や職場で飲むことが多いことがわかりました。

一方で、長い時間デスクに向かっている人はコンビニに買いに行く時間が取れず、250㎖ほどの缶コーヒーでは1日に南品も買う必要があります。このような人たちに、長時間でも飲み続けられる、すっきりしたテイストのコーヒーが各社から販売され始めました。

Competitor:競合

ペットボトルに入ったコーヒーとしてはサントリーの「CRAFT BOSS」が2017年4月の販売開始から9か月で2憶4000万本を売り上げました。すっきりとした味わいがうけました。この影響か、コカ・コーラ社の「ジョージア ジャパン クラフト」、伊藤園の「TULLY’S COFFEE  Smooth taste ESPRESSO」など多くの商品が「クラフトボス」を模倣しています。

Company:自社

アサヒ飲料には、コーヒーのブランドとして「WONDA」があり、モーニングショットなどが有名です。「TEA COFFEE」を投入するにあたり、事前にブランドが確立されていたことが効果的であったとおもわれる。また川栄李奈さんや神木隆之介さんを使ったCMで、ターゲットを若いオフィスワーカーであると伝えていることや、大規模サンプリングを行うなどプロモーションに力を注いできました。

以上のように分析してみましたが、「TEA COFFEE」がほうじ茶とコーヒーの掛け合わせという物珍しさからの購入に続けて、もう1度購入をしてもらうかは、商品のカテゴリーとしてアリ、と認められることが必要になるでしょう。

参考文献:アサヒ飲料

www.asahiinryo.co.jp/wonda/sp/teacoffee.html

東西線 早起き部

こんにちは!3年の岡田です。

(1)キャンペーンの概要

東西線早起き部というキャンペーンは朝ラッシュがピークを迎える前の時間帯に乗車する「オフピーク通勤(通学)」を推奨するもので、事前に登録したPASMO、Suicaを使用し、東葉高速線東葉勝田台駅~東西線門前仲町間のいずれかの駅で入場、東西線南砂町以降の東京メトロ全駅にて出場、乗換する人が対象となります。改札で、事前登録専用端末で登録したICカードをタッチすることで貯めたメダルを景品と交換することができます。

・キャンペーン対象駅↓

キャンペーン対象駅

・時間帯別メダル獲得数↓

メダルの獲得時間

ブロンズタイムが1メダル、シルバータイムが3メダル、ゴールドタイムが5メダル獲得することができます。

もれなくもらえるものとして、商品券があります。ゴールドタイムに改札を通れば最短で1か月ほどで商品を獲得できます。また、月替わりでグルメチケットなどの抽選も行っています。

(2)マーケティング戦略

アンゾフのマトリックスにより分類すると、既存顧客への既存製品を提供するサービスです。この早起き部のキャンペーンにより新たな東西線ユーザーを増やしたいのではなく、既存の乗客のニーズを深堀したのです。そのためプロモーション広告も東西線の駅構内や電車のつり広告だけで済みます。ピークを分散することができ、東西線ユーザーも通勤、通学するだけで景品をもらうことができるので一石二鳥のサービスであるといえます。

首都大生で東西線を使う人は少ないと思われます。新規顧客の獲得が難しい他の鉄道会社でも似たようなサービスで、既存顧客のニーズを深堀することが求められます。

【参考文献】キャンペーン公式サイト→https://hayaoki-metro.jp/

 

 

セイコーマート

こんにちは。3年の大賀です。

皆さんはよくコンビニに行かれると思いますが、コンビニエンスストアの顧客満足度を知っていますか?実は、サービス産業生産性評議会調査の顧客満足度1位は、業界最大手のセブンイレブンやローソンではなく、北海道を中心に展開するセイコーマートというコンビニエンスストアがここ数年間キープしているのです。

ということで、今回はなぜセイコーマートが人気なのか4Pを使って分析していきたいと思います。

 

〇Product(製品政策)

店内には、地盤である北海道産の食材を使用した食品がたくさん置いてあります。生乳、野菜、お米など北海道尽くしの商品が並んでいます。自社で経営する農園や、漁港から直接買い付けて揃えています。食品から日用品までセイコーマートのオリジナル商品を中心に、品数も非常に多く、道民に愛されています。

また、北海道での単身世帯の増加や高齢化が進んでいることから、セイコーマートはお惣菜に力を入れています。100円惣菜といったプライベートブランド商品が大人気です。店内に併設された「ホットシェフ」と呼ばれる厨房で弁当、おにぎり、ホットスナック、パンを手作りし、温かいまま販売しています。お米を厨房で炊き、パンも厨房のオーブンで焼いています。他社に先駆けて、1994年に「店内調理」を始めましたが、これほどの規模で行うコンビニチェーンはありません。寒い北海道ならではの戦略ともいえます。このように、商品で圧倒的な差別化ができていると言えます。

 

〇Price(価格政策)

セイコーマートは、100円惣菜をはじめとして、低価格を実現している商品が多いです。この理由は、原材料の調達から製造、物流、販売の流れを自社グループで担っていることにあります。また、生鮮品それぞれに契約農家がいることで、農家から直接食材を仕入れることができます。このように中間コストを徹底的に削減することで低価格を実現しています。

特にワインは、ヨーロッパ各国からの「自社直輸入品」であるため、500円で購入できるためワンコインワインとして、とても売れています。

 

〇Promotion(プロモーション政策)

セイコーマートは、他社にあまり見られない新聞広告による特売チラシや特価品などの広告が多いのが特徴です。毎週水曜日に生活必需品のクーポンがついたチラシが発行され、道民の生活を応援しています。セイコーマートでは、他社に先駆け2000年から顧客のクラブカードを始めました。その会員データにある住所、年齢、性別のような個人情報を登録してもらい、ある店舗にどの地域からどのようなお客さんが来たのか分かるようになっています。クラブカードから得たデータを活用して、他社との競合に負けているエリアに重点的にチラシを配っています。

テレビCMは、北海道を中心に流していて北海道に縁のある人物が出演しています。より親近感の湧く地元密着型の広告で、販促活動をしていることが分かります。

 

〇Place(流通政策)

コンビニチェーンとしては日本最古参で、1971年に札幌で1号店を出店しました。現在では、北海道で1101店舗、茨城県85店舗、埼玉県11店舗を展開しています。店舗数は、セブンイレブン2万286店、ローソン1万4083店と、圧倒的に負けています。しかし、北海道に限ると、店舗数はセブンを抑え、堂々の1位です。

さらに、セイコマートは24時間営業を基本としていません。北海道は広大で、過疎地が多いため24時間営業をすると採算がとれないため、来店が見込める時間帯を中心に営業をすることで、収益性を上げています。また、店舗の大半がオーナーを必要としない直営店であるため、オーナーがいない過疎地域でも、本社の意向で出店できます。最近では、過疎地域にも積極的に進出しています。買い物に不便を感じる住民や存続が危うい自治体からの出店依頼に応えて、深く地域に根付いています。

 

このように、セイコーマートはコンビニ業界で「ニッチャー」として成功している企業といえます。特定のセグメントである北海道を中心に集中戦略をとり、大きな利潤を上げていることが分かりました。皆さんも北海道に行った際、訪れることをおススメします。

参考

http://news.livedoor.com/article/detail/14731552/

https://www.seicomart.co.jp/

 

 

 

 

ルマンドアイス

こんにちは!3年の立古です。
今年も暑い暑い季節がやってきますね~
そんな時こそ食べたくなるのはアイス!
ということで今回私は最近よくコンビニやスーパーで見て気になっていた
ルマンドアイスについてなぜ人気が出たのか調べてみました。

まずこの「ルマンドアイス」とは、ブルボンのだれもが知る大人気商品のルマンドがもなかアイスの中に4本入っている商品です。税抜き225円とアイスにしては高級な値段です。

人気が出た主な理由として挙げられるのは徐々に徐々に販売地域を拡大していったことだと考えられます。2016年夏にブルボンのアイス業界新規参入として話題となり、ブルボンアイスが発表され、商品を見てテンションが上がったルマンドファンが、「これならもなかアイスにルマンドを挟んで自作できるのではないか?」と「ルマンドアイス」を自作する人々が登場して、TwitterなどSNSやテレビで発売前から盛り上がりあがっていました。
最初はブルボンの本社がある新潟と、北陸三県でのみ販売を始めました。生産が間に合わずに、新潟を除く北陸地域で販売を縮小しなければならないほどの大ヒットでした。
またその後、待望の声を受け、東京駅でも2週間1日500個限定で販売したけれど、開店前から行列ができ、急遽整理券を配布することになるほどの人気を示しました。
その好評な結果を受け、地域をどんどん拡大していきます。

2017年2月 ⇒ 長野県、山梨県
2017年5月 ⇒ 宮崎県、鹿児島県、沖縄県
2017年7月 ⇒ 九州地区全域
2017年9月 ⇒ 愛知県、岐阜県、三重県、静岡県
2017年10月⇒  青森県、岩手県、秋田県、山形県、宮城県、岐阜県、福島県、北海道
2017年11月⇒  中国・四国地域
2017年12月⇒  大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県
そして最後の最後に待ちに待った関東圏での販売ということで、焦らされ待たされたことによって、じわじわと期待も高まり人気が出たのでしょう。
地域が拡大するごとに話題となり歓迎されたようです!
ちなみにこのような地域の順番になったのは、量産体制の整備と供給量の確保のバランスによるものだったみたいですが、関東圏を最後にしたことでより爆発的なヒットになったことは間違いないでしょう。
また、2018年3月からロイヤルミルクティー味も発売している。だがしかし、これも最初は新潟と北陸三県限定での販売ということで、早く全国販売になることが期待されているようです。今後の売れ具合や地域拡大に注目していきたいです。

 

ラーメン一蘭

こんにちは。3年の西念です。
先日私が見ていたテレビ番組の中で、「外国人に人気のラーメンランキング」という企画がありました。その中で1位に輝いた、一蘭というお店について興味を持ったので、マーケティングの観点からアプローチしていきたいと思います。

一蘭の大きな特徴は2つあります。
1つは、専門性です。一蘭のメニューは豚骨らーめんのみで、チャーハン、餃子やほかの味のラーメンがありません。メニューを一つに絞り込むことで味を追求していくことが出来ます。また、自分の好みに味を変えていくことが出来ます。

2つ目は店内のレイアウトです。個室のようにひとつひとつの席が仕切られていて、人目を気にすることなくラーメンを食べることが出来ます。この特有の席は「味集中カウンター」と名付けられています。箸を使うのが苦手で、それを見られたくない外国の方や、気軽に一人でラーメンを食べたい人にとってこのカウンターはありがたいものですね。

これらの特徴は一蘭をブランドとして印象づける効果があるのではないかと考えられます。一蘭をみて、個室カウンターや豚骨ラーメンを想起させるような特徴をつくることで、消費者がより一蘭を選びやすくなるという効果を狙っているものです。また、特許を取得しているので模倣されにくいという点も強みです。

また、このような特徴から、来店した消費者は口コミでその価値を広めたり、私が見たテレビ番組のようにメディアで取り上げられ、知名度が高くなるというような効果も期待できるのではないかと考えました。

2020年の東京オリンピックを控えて、外国の方に向けたマーケティング施策を考えていくことも大切だと感じました。
興味がある方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

参考:
https://www.sbbit.jp/article/cont1/29105
https://ichiran.com/ramen/

西垣通(2018)『AI原論』講談社選書メチエ。

水越です。こんにちは。

せっかくなのでこちらに。前回の『ビッグデータと人工知能 – 可能性と罠を見極める』(中公新書、2016年)は、正直なところ古い感じの印象が強かったのですが、今回の方はかなり先鋭的で、個人的な興味とも合わせ刺激的でした。おすすめです。以下、自分なりに分からなかったところも含めまして。

思弁的実在論に向けて
西垣(2018)は、シンギュラリティを始めとするAIへの不安や期待を素朴実在論にもとづくものとして捉え、相関主義による研究蓄積から批判するとともに、さらにAIの可能性にも言及しうる新しい視点として、メイヤスーによる思弁的実在論(『有限性の後で』)を検討する。この際の重要な点として、思弁的実在論では、素朴的実在論はもとより相関主義において重要な前提と考えられてきた理由律が取り除かれるとされる。この点は、AIの可能性を結果と理由の探求において考察しようとしてきた我々にとっても重要な知見を提示するものと思われる(「AIを活用したユーザーニーズの探索プロセスにおける「結果」と「理由」に係る一考察」(依田・水越・本條, 2016)。

まず西垣が出発点とするのは、カントのコペルニクス的転回以降、今日の多くの哲学は人間から離れて真理や法則、物自体を捉えることはできないと考えているということである。言い換えれば、人間という観察者の問題と、物自体がどういうものであり、どのように探求可能であるのかは不可分に結びついており、物自体を直接探求することはできない。相関主義とは、まさに物自体が人間という観察者との相関関係によってのみ定まるということを意味する。逆に、真理や法則、あるいは物自体を探求できるという考え方は、古典的で日常的な考え方として素朴実在論と呼ばれる。素朴実在論を哲学領域において支持する研究は多くない。私がどのようにして真理や法則に到達できるのかという問題は、それこそ素朴に考えて通常の論理では答えることができないとともに、むしろ到達できないことからはじめる(あるいは、できているのかどうかを直接的に問題としない)議論のほうが、実り多い研究知見として発展してきた。

今日の基本的な考え方のもとになる相関主義は、その一方で、自らの価値を強く主張することができないという問題がある。相関主義では、観察者と結びついて真理や法則の多様性を認めることになるとともに、仮に大きな問題があるようにみえる真理や法則に対しても、それを批判しまた否定する強い根拠を持ちにくいのである。例えば、40億年前に地球が生まれたという主張と、昨日私が地球を作り出したという主張が等価になってしまいかねないというわけである。

こうした問題は相関主義の絶対化であり、一種の反転を伴っている。ちなみに、これは定番の問題であるとともに、過去の議論において洗練されてきたように思われる。最もよく知られているのは、否定神学から展開される一連の議論であろう(『存在論的、郵便的』)。神の否定が、我々には肯定し得ない存在としての究極的な神の存在を肯定することにつながるという論理は、当の否定された神に唯一性ではなく複数性を仮定することもできる。あるいは、肯定に至る過程もまた複数化できるとともに、例えばその過程を時間や速度を設定すれば、また別の結果を見出すことができるようもなる。

思弁的実在論の特徴
こうした議論に対して、しかし、思弁的実在論ではむしろ逆に物自体への直接的な探求が可能であると主張することにより、相関主義の絶対化に対応しようとする。ただし、もちろんそれは素朴的実在論へ戻るというわけではない。理由律を棄却することによってその実現を目指す。

西垣によれば、この論理は2段階である。まず第一に、主観主義的形而上学が取り上げられ、相関主義の問題に対して、彼らは「主観に基づく相関主義自体が絶対であり、理由律を踏まえた必然的なものであるはずだと主張する(西垣, 2018, 80頁)」とされる。この際、絶対化が認められる主観とは、具体的には「ニーチェの『力への意志』、ヘーゲルの『精神』、ドゥルーズの『生』といった審級(西垣, 2018, 80-81頁)」が該当する。ただここで言う「主観に基づく相対主義自体が絶対だ」という主張がどういう意味なのかは、今ひとつはっきりとしない。いささか補足していうと、むしろ焦点は、後者の「理由律を踏まえた必然的なもの」という点にあると見たほうがいいかもしれない。例えば、ここでは例示されていないが、当の主観性ではなく、むしろ理由律を作り上げていると思われる言葉や形式、あるいは端的に論理への期待が示されているのかもしれない。それは例えば、この前で強い相関主義として言及されているヴィトゲンシュタインによる一節、「論理は超越論的である」を想起させる(『論理哲学論考』)。

こうしてひとまず主観主義的形而上学に焦点を当てることで、相関主義の問題を乗り越えるに際して理由律(あるいは論理)が重要になってきた可能性が見いだされる。そして、思弁的実在論では、この理由律を棄却することによって、物自体へのアクセスを担保できるようになるのではないかと考えるわけである。

ただこの点の説明も単独ではわかりにくい。「われわれ人間の『外部』にもはや究極的存在を仮定することはできない。ゆえに、理由律にもとづいて即時的存在の必然的なありさまについて語るのはおかしいということになる(西垣, 2018, 82頁)」として、主観主義的形而上学による強い相関主義への論駁が否定されるというわけだが、理由律自体が究極的存在というわけではないようにもみえる。論理は超越論的であるという主張を改めて想起してもいいのならば、論理は思考そのものであり、素朴な意味での外部ではない。あるいはここでいう究極的存在は、即時的存在としての物自体を指すのかもしれないが、であれば改めて理由律の身分が問われるとともに、それを棄却する理由がはっきりとしないままになる。

理由律を維持できない、あるいは維持しない理由が何かはっきりとあるかどうかはわからないが、少なくとも理由律を棄却してしまえば、結果として得られるのは「世界(宇宙)には絶対的な事実があり、しかもその事実の出現は『偶然だ』(西垣, 2018, 83頁)」という考え方である。主観主義的形而上学の主観が絶対であるという主張に対して、思弁的実在論では、偶然性が絶対であるとされることになる。当然、この世界が偶然としてあるのならば、それは観察者とも切り離される。一度切り離されれば、後はそれを数学的に記述することが正当性を持つという。

数学的に記述するという点についても別途確認する必要があるが(後段では「論理的・数学的に語ることはできる(西垣, 2018, 86頁)」とされる。これは理由律はや論理とどのように異なるのか)、それ以上にまずは偶然としてこの世界があるということの意味を確認しておく必要がある。この世界が偶然であるという指摘は、自然法則にも適用される。自然法則がそのようにして存在し、未来永劫機能する必然性はない。それが今あるように機能しているのは偶然だということである。

※(2018.6.7追記) 数学的に記述するということについて、千葉雅也は同様の指摘があったとして、以下のようにツイートしている。「そこは当事者の人たちの間でもブラックボックスみたい。メイヤスーによれば、実在それ自体は数学で書けるというわけだが、なぜ数学なのかは経験的な前提っぽいのよね。現に人間と関係なく数学で操作できてる事柄があるという。その関係ないというのは質的思考の外ということ。それは……身体の次元、行為、何かができる、ということか。」この認識は『数学する身体』を想起させる。数学(という形式)は、私達を、まだ知らないところへ連れて行ってくれる。

相関主義にせよ、主観主義的形而上学にせよ、これまでの議論で理由律が維持されてきたのは、一つには、論理性そのものが議論なりもっと素朴な意味での会話をこれまで可能にしてきたということであると思われる。と同時に、多くの相関主義や主観主義的形而上学において、物自体への探求を(アクロバティックな形で)可能にする方法として理由律は実際に有用だったからであろう。だが同時に、理由律を棄却してしまっても、あるいは理由律を棄却してしまえば、物自体が今ここにあるという事実性から議論を作り上げていくことができるのかもしれない。

AIとの接続と時間との関係
この理解は、AIには確かに都合の良い視点であるように思われる。まずは西垣が指摘するように、AIが人間知を超えた絶対知を目指すというのであれば、少なくともそれは相関主義を前提にしてはあり得ない。とはいえ、一方の素朴実在論のままでも上手く行かないこと(証明のしようがないというべきかもしれない)は自明なのであるから、そこでは思弁的実在論が有用性を持つことになるだろう。

それからもう一つ、我々の興味として、AIには理由律が不要であるという点もまた、AIには都合が良いように思われる。この点は、西垣ではむしろ限界のように捉えられているが(自然法則の永劫性すら無用になってしまうため)、しばしば指摘されるように、AIがなぜそのように判断したのかは、我々には理解できないことが多い。理由を与え、またそこに原因を見出すのは結局人間の仕事であるともされる。思弁的実在論が主張する物自体へのアクセス可能性と、その代償としての理由棄却は、いずれもAIに上手く対応するわけである。

ただし、AIが実際に理由律を前提とせずに何かしらの結果を出すという時、その材料となるのはビッグデータである。西垣では、この点についても、「過去のデータの分析によって作動する(西垣, 2018, 182頁)」として最終的に否定的に捉えている。これは今を生きる人間の可能性を担保することになるが、時間軸にどの程度厚みを持たせるのかは議論の余地があるようにもみえる。類似した議論として、過去の分析から未来は見えない、あるいは未来は過去の延長線上にはないという指摘はありうるが、もはや理由律が棄却されたのならば、AIがそのように捉えた現実はそれとして認められることになるのではないだろうか。

西垣では時間についての考察も行われている。「ここでいう『時間』は、科学的な理論モデルにおける時間パラメータとは異なる。・・・刻々とリアルタイムで流れていく、繰り返されない時間(西垣, 2018, 93頁)」であるともされる。他の用語を使えば、持続であったり、微分的である現在の重要性が強調されているものと思われるが、この時間を、AIが持ちえないのかどうか(あるいは逆に、人間が実際のところ持っているのかどうか)はよくわからない。

時間を検討するのならば、別途、『時間と自己』を参照してもいいのかもしれない。よく知られているように、『自己と時間』では時間に関する問題は精神病に対応づけられる。今を生きるという日常的な生活が上手く行かない場合、過去に固執しそこに留まろうとする鬱病と、逆に未来に生き急ぎ空回りする分裂病となる。そして、今にだけ生き続けようとする人もまた、躁病として捉えられる。したがって、日常的な生活とは、これらのどれかに生きているのではなく、3つ(あるいは2つ)の調整に他ならない。

もしAIが過去に止まるというのならば、それはようするに鬱病ということになる。「あえて言えば機械は過去に縛られているのだ(西垣, 2018, 184頁)」という指摘は、まさに鬱病を想起させる。だが同時に、その前段でクラウドAIネットに一定の評価がなされるとおり、当の過去(データ)は、刻々とリアルタイムで増えているのであり、ネットと結びついたAIは決して今現在与えられた過去に固執するわけでもない。それは人間的だといえるのかもしれない。

ということで、詳細については原著に当たりながら再検討することにしたい。少なくともいくつかの論点を用意できるだろう。

時代は『モノ消費からコト消費へ』

こんにちは!3年の平松です。

「モノ消費からコト消費へ」
近年、そんな言葉をニュースや新聞でも多く見かけるようになりました。
JR東日本企画の調査からもこのような変化が顕著に見られます。(参照→http://www.jeki.co.jp/info/files/upload/20160125/160125WoTHP.pdf)

モノ消費とコト消費…そもそもこれらはそれぞれどんなものを指すかと言うと、
まず商品の所有に価値を見出す消費傾向を「モノ消費」といいます。
それに対して、商品やサービスを購入したことで得られる体験に価値を見出す消費傾向を「コト消費」といいます。

最近は、あらゆる分野において、実際に「モノ消費からコト消費へ」の移行が起きているのが見て取れます。

例えばディズニーのパレードでいうと、昔は見るモノとして人気を集めていましたが、現在では夏限定で行われている「パイレーツ・サマーバトル“ゲット・ウェット!”」のように、ゲストも一緒に参加して楽しむパレードが注目されています。

また、年々増加傾向にあるランニング人口に対し、2012年にアメリカではじまり、2014年日本初上陸し、東京ドイツ村で開催された『The Color Run™』は皆さんご存知ですか?
これは、「the Happiest 5k on the Planet(地球上でもっともハッピーな5km)」をコンセプトに、健康的でユニークかつエキサイティングな時間を過ごす、笑顔あふれるファン・ランニングイベントとしてはじまりました。現在では、エレクトリック・ランやバブルラン、ウォーターランなど更なる発展を遂げて、今でもなお人気を集めています。

ちなみに、私が最近最も気になっているのは、お台場パレットタウンに6月21日(木)オープンする本格的デジタルアートミュージアム「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: teamLab Borderless」です。
“Borderless”をコンセプトとしたチームラボ×森ビルによる“巨大デジタルアートミュージアム”であり、それぞれテーマの異なる5つの空間が設けられており、世界初公開作品を含む約40作品が展示されています。特に今回は、子供だけでなく大人もターゲットとしたチームラボアスレチックも用意されています。家族・友達とお台場に出掛ける際は、ぜひ皆さんも足を運んでみてください!

このように消費文化の変化に注目し、多くの分野で新たな試みが行われています。今後、新たに“コト消費”を新規事業としてはじめる企業も出てくると思うので、引き続き注目していきたいと思います。

<参考>
コト消費→https://www.google.co.jp/amp/ferret-plus.com/amp/6452
https://ferret-plus.com/9231
ディズニーシー→http://www.tokyodisneyresort.jp/blog/pr170413_2/

カラーラン→https://dosports.yahoo.co.jp/column/detail/201404040001-spnavido

チームラボ→https://www.fashion-press.net/news/36869

値切れる商店街

こんばんは。3年の丹羽です。 買い物といえば、定価で買うことが一般的です。いくら商店街とは言っても、値切るなんてハードルが高い…と感じる方も多いでしょう。しかし、直接お店の方とやり取りをしなければ商品を買うことが出来ない商店街があります。それが大阪の新世界にある、Wマーケットです。

 Wマーケットは、「シャッター街で遊ぼう」をコンセプトとして、新世界のシャッター街化してしまったとある商店街を活気づけるために週末にのみ開かれているマーケットです。商店にある品物にはいずれも値札がなく、「これなんぼ?」と値段を聞くところから取り引きをしなければなりません。一見するとむしろ面倒に思えますが、マーケティング的にみると面白い点がありました。

まず、この面倒なやり取りの意義です。値切りの交渉以前に値札を付けないということにはどのような意義があるのでしょうか。

値札を付けないと、欲しいと思った商品を買うには嫌でも1度店員さんと話をしなくてはいけません。お店の方からすれば、提示した値段をつけた理由を必ず説明しなくてはなりません。このやり取りの中で、購買者はその製品やお店の方の価値観や背景を知ることになります。これにより購買者は、例えばコーヒー1杯にしてもそこらの自販機で買うのとは異なる「愛着」を持つようになります。本来なら低関与(関心)になりがちなジャンルの製品に対する関与が強まったり、「この店員さんの淹れる」コーヒーというようにほかの単なる消耗品とは異なる価値を持つ商品として差別化が図れます。

また、苦労して手に入れた製品ということで、取引の事後にも愛着が生まれ、満足感が上昇します。

更に、1度話を聞いてしまったり、あるいは値段交渉をしたりする中で申し訳ないという気持ちが湧き、購買に繋がりやすいという心理的アプローチの側面があると考えます。最初はふっかけた値段を付けておき、値切らせて恩義を感じさせ、購買につなげるという、「ドア インザ フェーステクニック」や、愛着を持った店員さんの品物はいいものである、と思ってしまう「ハロー効果」 、話を聞いてしまうとそれに矛盾しないように買いたくなってしまう、一貫性に基づいた「フットインザドア」というテクニックも使われているのかも知れません。

更に面白いのは、現金も使えるこのマーケットに用意されている、現金同様使える金券です。これを買うと、「端数カッター」というチケットが手に入ります。これは文字通り端数を切り落としてくれるチケットで、何回も使えます。どこまでを端数とするかさえ店員さんとのやりとりの中で決めます。こうしたチケットで店員さんと話し合う時間を作り出す狙いもあるのでしょう。更にリアルクラウドファンディングカードというものも用意されており、これを1番多く集めた露店は、開店資金としての500万円を手に入れられます。これにより、お店からはよりサービスをしようという心理が、客には自分がそのお店を支えているという自覚が生まれ、1層愛着を持つようになります。

これらの要因からか、今Wマーケットは大人気になっています。私も今度大阪に行く時に行ってみようかと思っています。

出典

Wマーケット公式ホームページ(http://w-market.jp/)

ファッション通販サイトの比較

こんにちは。福田です。

先日、韓国のファッション通販サイトを利用しました。そこで今回は日本の通販サイトと比較し、消費文化やマーケティングの違いを考えていきたいと思います。

私が利用したのは、gogosingという韓国ファッションブランドのサイトです。使ってみて感じた一番の違いは、写真に対するこだわりの強さです。もちろん通販での買い物は実際には手に取ることができないので写真を重視することは当然ですが、韓国のサイトではより重要視されているようでした。掲載されている写真の数は一点につき20枚以上のものが多く、中にはGIF画像のものもありました。さらに、スマホを使って自撮りした写真が多い印象を受けました。ただ商品を紹介するだけでなく、コーディネートの紹介や着た感じをイメージしやすくする意図が感じられます。

日本の通販サイトは、素材のアップ写真やカラーバリエーションの一覧などがメインで商品紹介に力を入れていることが伝わりました。

また、SNSの活用も一味違いました。日本も韓国もInstagramなどのSNSを使ってプロモーションをおこなっているファッションブランドは多くあります。SNSで自社の洋服を紹介し消費者に興味を持ってもらうことや、写真で着こなしを紹介してより多くの商品を買ってもらう戦略があるからです。しかし、gogosingのInstagramと商品ページの最後には、モデルの情報が掲載されています。売り出したいモデル側は宣伝の場として活用し、ブランド側はモデルを使った撮影を安価にできるため、双方のメリットが合致しているそうです。加えて、韓国ではインフルエンサーとして活躍する人が多く、人気のあるブロガーをはじめ影響力のある人に商品紹介をしてもらうことが重要であるようです。日本にも芸能人ではなく人気のあるインスタグラマーやYouTuberなど影響力のある人が増えつつありますが、一方でモデル紹介などの取り組みは日本のサイトではそれほど多くないように思います。インターネット大国である韓国だからこその消費文化も多くありそうだと感じました。国や文化の違いによって戦略やマーケティングが違うことは当たり前ですが、その違いを比較して、日本の消費文化の特徴を調べてみたくなりました。

参考文献