マーケティング・ミックスも難しい

前回の「STPが難しい」に引き続き、マーケティング・ミックスも難しいということで。おそらく、STPよりも、マーケティング・ミックスを考えましょうというお題は難しいものになります。理由は、マーケティング・ミックスは、その出自が戦略ではなくもっと特殊なもの=マーケティングから始まっているから。こちらについては以前別に書きました「マーケティング・ミックスは遺物か?」。あるいは、もう少し論文らしくしたものはこちら「マーケティング・ミックスは経験則か?」。逆に、STPは汎用性が高いです。

なんにせよ学生の皆さんにもお願いしている例は前回と同じくこちら。実際にマーケティング・ミックスを考えてみることで、なんとなくわかっていたものをより精緻に捉えられるようになります。僕自身も含めまして。

1。個別製品やサービスを対象にした方がいいよ。

一つ目は、STPでも紹介しましたが、マーケティング・ミックスもあまり全社戦略としてはフィットしないと思います。価格戦略と言ってもいろいろ、販路もいろいろ、広告はとにかくたくさんみたいなことになりがちです。これはマーケティングとして言えば、全社戦略として多様な顧客を対象にしていることに由来するわけですが、顧客を絞り込んでこそ、具体的なマーケティング・ミックスを考えることができるようになることがわかります。

2。お店の分析は不向きだよ。

日常目にする小売店をマーケティング・ミックスとして考えると、しばしばよくわからないことになりがちです。ユニクロを考えてみようということになると、あれ、流通はどうしたらいいの?ということになります。もちろん、最近はネット販売もしていますから、製品を絞り込むことである程度の分析や考察は可能だと思いますが、制約は多くなりがちです。逆にここから、マーケティング・ミックスを考えやすいものがわかります。製品や、メーカーですね。マーケティングは、歴史的に、寡占的製造企業の特殊な活動として見出されたのでした。「マーケティング競争の構造」をご覧ください。小売を考える場合には、小売ミックスという手もあります。こちらは、「商業学」か、あるいはもう少し踏み込んで「流通論をつかむ」に論理を含んだものがあります。

3。サービス業も考えにくいかも。

先の小売業もサービス業の一つです。サービス業は、総じて考えにくいと言えるかもしれません。サービスの場合は、ご存知の通り、4つの要素に限らず、7つや8つで考えることもよく知られているところです。ここを経由すると、要素を増やしたり減らしたり、自分なりのアレンジがありうることが見えてきます。それがいいかどうかは、よく考えるべきところですが。

4。ビジネス財は大丈夫だよ。

学生の場合にはあまり出てきませんが、ビジネス財といいますか産業財もマーケティング・ミックスから考えることができます。とはいえ、消費財とは異なり、価格設定もプロモーションも販路も、それからもちろん製品面もずいぶんと異なったものとなります。合わせて、ビジネス財の場合には、営業を中心とした関係構築的な活動が多くなりますので、マーケティングの意味合いそのものが随分と違うものになっている可能性があります。

5。PでもCでも同じだよ。

ちょっと勉強している学生になりますと、4Pじゃなくて4Cの方が今風と考えたりもします。多分どっちでも一緒なので、使いやすい方で気にせずどうぞ。個人的には、どうして4Cがそれなりの知名度を得たのかに興味があります。現状だと、探せるのは1990年の学会報告資料一個しかないですよね。誰か当時をご存知の方教えてください。

6。デジタル時代には新しくなってもいいかも!

コトラーのマーケティング4.0」では、アイデアだけ提示されています。そのアイデアは「1からのデジタル・マーケティング」で具体化されていいますのでよければ是非ご覧ください。ポイントは、顧客の参加をどれだけ認めるのかということでしょうか。時代の流れを感じますね。顧客が入りこむ過程こそが、マーケティング・ミックスの成立に大きな影響を与えたのでした。たしか。

7。ミックスがまずは大事。次は個別テーマの深化だよ。

マーケティング・ミックスのポイントは、4つの組み合わせであることは言うまでもありません。プッシュ型、プル型よろしく、パターンを知ることが有用です。合わせて、組み合わせになれてきたら、一つ一つの個別テーマをそれぞれ考えていくことができます。製品戦略だけ、価格戦略だけ、プロモーション戦略だけ、流通戦略だけ。いずれも多くの研究蓄積があり、それらを知ることで、改めてマーケティング・ミックスの理解を深めることができます。

などなど。


2020年04月16日 | Posted in エッセイ | | Comments Closed 

関連記事