本章では、モバイルアプリに焦点を当て、消費者の購買に大きな影響を与えている流通モバイルアプリのあり方について、消費者の購買意思決定プロセスに着目して考察している。
1デジタル化による消費環境の変化
巨大流通プラットフォーマーの出現
流通機能を担う流通業者のビジネスモデルのは多様化しており、取引形態は、製造業者から消費者へと垂直的な「パイプライン型」と複数の顧客グループを仲介し、手数料収入を得て成り立つ「プラットフォーム型」が存在する。
流通ビジネスモデルの類型
オフライン/オンライン×パイプライン/プラットフォームの4類型に加え、オムニチャネル・モデル(実店舗×EC)やハイブリッド・モデルが存在する。これらはデジタル技術により常に変容する。
2デジタル化による小売マーケティングの変化
4つの「真実の瞬間」
購買意思決定プロセスのステップとして、FMOT(店舗で見定め)、SMOT (使用経験)、ZMOT (事前の情報の探索や収集)、TMOT (使用後の共有や発信)がある。そして、プロセスの順序は一方向性や単線系ではなく、双方向性と個別性を持つ。
モバイルマーケティング
インタラクティブな性質かつ、モバイル広告や販売促進などの関係性構築活動を含むものであり、特に小売業のマーケターが重要性を強く認識する。そして、来店を待たずに低コストかつ特定な対象の購買意思決定プロセスに介入することが可能となる。
モバイルアプリと購買意思決定プロセス
モバイルアプリは、モバイルマーケティングの前提であり、オンラインとオフラインの垣根を壊しつつ、境界領域を拡大する。具体的に、買い物リストの構築や接客不要な支払方法の提供などである。
モバイルアプリと反応モード
反応モードは態度、行動、認知で構成され、それぞれの反応モードで、消費者がとる行動、その行動による態度、それに伴い活性化する認知的な情報処理を支援する様々機能が期待されている。
情報のハブとしてのモバイルアプリ
上の機能を遂行するアプリが提供する情報の識別については、小売業者に閉じた世界/個人に閉じた世界/マーケットに開かれた世界/社会に開かれた世界という4つの世界から提供される情報のバランスの上で成り立つ。
4 競争類型
『機能の統合性』と『製品カテゴリーの統合性』を軸に、両方高い「リーダー型モバイルアプリ』両方低い『市場・機能特化型モバイルアプリ』がある。
まとめ
①モバイルアプリにおいて、買物のスマートさと楽しさの最大化のために軸の両方を設計すること
②リーダー型以外の展開は、①に加え、特定機能を絞り込み、適切性を高めたアプリに調整すること
③小売や製造業者は、競争類型を考慮して、リーダー型モバイルアプリに依拠した展開をするか、市場と機能に特化した価値を有するアプリをつくり、リーダーとの併用を狙うこと
以上の3点が重要である。
実際に具体例を自分なりに考える。アパレルに関して、「ZOZOTOWN」はリーダー型モバイルアプリに部類し、「WEAR」は、市場・機能特化型モバイルアプリであると考えられる。「WEAR」は、インフルエンサーやショップ店員が実際に商品を着こなすコーデ投稿アプリであり、基本的に「見る、参考にする」部分に特化している。重要なのは、これらが独立しているのではなく、「リーダー型への依拠と特化型の併用」という本章の結論(まとめ③)を体現している点である。具体的は、WEARでインスピレーションを得て、そのままZOZOTOWNで購入・決済するという流れである。このシームレスな相互作用こそが、現代の消費者が求める「スマートかつ楽しい買物」の正体であると考える。
私たちは何気なく様々なモバイルアプリを使い分けているが、この背景には様々な設計が行われている事実に驚いた。そしてこの何気ない使い分けの分析やその上での設計が重要であると感じた。特にリーダー型を目指したり、機能を増やすだけでなく、特定の価値や市場に振り切った「特化型」としてリーダー型と共生する道筋があるという視点は、今後のモバイル戦略を考える上で重要である。