いつ買っても安い(エブリデー・ロープライス)のメリット

エブリデー・ロープライス(EDLP)。代表的にはウォルマートが知られていますが、正直、この意味がよくわかっていませんでした。いつも安いのは当たり前の話であって、いつも高い店に行きたい人はいないだろうと(笑 特に日本では、基本的に大なり小なりEDLPが採用されているようで、その実感がわかなかった次第です。

もちろん、以前書いたテキストでは、黒岩先生がEDLPとハイロー・プライシングを比較しながらそのメリットを説明しています。すなわち、いつ買っても同じ値段なので、顧客は安心して買うことができる。また、店舗側にとっても、マネジメントの安定化を図ることができる。確かにそうだと思います。

このことを特に実感したのは、トロントでちょっと生活してみた時でした。こちらの店舗は、たぶん、基本的にハイロー・プライシングです。もっというと、通常価格高すぎる(笑

ドラッグストアに例えば行くと、通常価格と、部分的にセール価格が並んでいます。写真だとみえにくいですが、通常価格で23ドルぐらいするものが、セールと称して16ドルぐらいになっています。これはまだ下げ幅が小さい方で、10ドルぐらいのものが3ドルとか、ざらにあります(探したら追記でアップします。)

さらによくわからないのは、フリーズ価格なるものもあって、ちょっとだけ値下げされて固定されていたりする。これ以上は下がらないから安心して買ってねということでしょうか。ちょうどこちらのCOLD-FX(風邪薬かと)は、定価51.99ドルが、セールで38.99ドルですね。このぐらい違うと定価では買いたくない。

どういうメカニズムになっているのかは定かではありませんが、おそらくメーカーからのリベートを原資にして、ときどき大きく値段を下げるわけです。これをするとどうなるかというと、顧客としては、高いときには買わなくなります。いつか分らないけれど、安くなった時を狙ってまとめ買いです。それ以外に買うのは、どうしてもやむを得ない時だけ。。。定期的なセールで半額以下になるのが分っているのに、定価で買うのはもったいない。

店舗側のメリットとしては、顧客の来店頻度を上げることができるのかもしれません。またロスリーダー的な役割も期待できる。メーカーとしても、ブランドスイッチの可能性を期待できる(とにかくそのときに安いものを買う、みたいな。あるいはその価格差を乗り越えるブランド価値を構築できれば、定価でも売れる、など)。

ただ、EDLPの方がいいのではないかと、一顧客としては思う次第です。


価格競争があんまり、、、と思うわけ

牛丼界で没落したゼンショー どこで競合店と差が出たのか

何年か前、ビジネススクールの飲み会のときに牛丼競争の話題になりました。当時、三社が激しく値下げして競争していたわけですが(200円ぐらいになるんじゃないかと思っていた時期もありました)、どうして値下げ競争は駄目なの?というわけです。その時は何となく詰まったところがあり、あ、駄目でしょ?とだけいったわけですが、改めてと思い出した次第です。

その時なんとなく詰まってしまったのは、値下げして市場独占にまでいたれば、後からいくらでも回収できるかもと思ったしまったからでした。現実にそれは難しいことはわかりますが、うまく説明できるような感じではなかった(飲み過ぎていたかも、でも覚えているわけで。。)かなと思います。


値下げ競争は、まずは均衡への道です。均衡に達すれば、どの企業も利益は生存ぎりぎりの状態となります。基本的に、競争戦略とは、こうした生存ぎりぎりの状態を脱して、より多くの利益を確保するために行われます。

一方で、現実には、生存ぎりぎりになればなるほど、弱い企業は撤退することになります。弱い企業を可能な限り排除した結果としてえられるのは、独占状態です。独占になれば、後はやりたい放題です(もちろん、これも現実には難しそうですが)。

同時に現実には、独占状態になる以上にメリットが生じる可能性があります。例えば牛丼市場を考えた場合、値下げをすることで、他の牛丼企業に影響を与えるだけではなく、他の隣接市場にも影響を与えそうです。ハンバーガーを食べるのではなく、牛丼を食べようかというわけです。

実際にあのときうまく答えられなかったのは、この可能性、他の市場を浸食する可能性の、問題点を思いつかなかったからでした。他の市場もとれるのならば、うまくやっていけるのかも、と思ってしまったわけです。けれども、実は他の市場を侵食した場合、いつまでも独占が成立しないという大きな問題が生じると思います。隣の市場はたくさんあるわけですので、次々に他の市場の企業とも対決していかなくてはならないわけです。

他の市場を侵食できるというのは、メリットのようにみえて、おそらく、そもそも独占状態が成立しないというデメリットです。単に、当初の話通り、価格競争は均衡に至る道だということになってしまうからです。であれば、独占に至る前に(というか至らなくなってしまっているので)、どこかで反転した別の戦略をとった方がいい。


ところで、競争戦略は、基本戦略としてコストリーダーシップと差別化にわけられます。コストリーダーシップは値下げをベーストするわけですが、ここから、条件がもう少しみえてくるかもしれません。市場や産業が他の市場や産業からどのくらい独自的であると言えるかどうか、独自的であるならば、独占を狙って値下げするという手は生きてきそうです。一方で、独自的でないならば、ファーストフード市場という場合にはそうな気がしますが、コストリーダーシップは中長期的には今ひとつかも、ということになるのかなと思います。

今更ながら、記事を読んで思い出しました。


 

輸入ビールとライン拡張

前回LCBOの話をしましたが、トロントではビールがたくさんあります。500mlで2ドルから3ドル程度と言うことで、値段的には日本と同じです。国産ビールと思われるMolson CanadianやLabatt Blueはもとより、輸入ビールが多い印象。もちろん日本のビールもあります。

考えてみると、日本ではあまり輸入ビールが多いという印象がありません。もちろんバドワイザーとかハイネケンとか買おうと思えば買えますが、例えばコンビニの棚にたくさんならぶビールを見ても、結局作っているのは国内4社、の気がします。

カナダでも日本でもビールが沢山売っているのに、一方は国内企業の商品が中心で、一方は輸入ビールも含めたラインナップになっている。さて、ここからマーケティングとしては何を考えられるでしょうか。

輸入と言えば、すぐに思い付くのは関税でしょう。ただ値段を比較してみると、ハイネケンなどの値段はほとんど同じです(むしろ、たぶんカナダの方が高い)。実際調べてみると、どうも日本でもビールに関しては関税がかなり低い模様。

とすれば、日本は市場規模に魅力がなく参入する必要もないか、あるいは参入したくてもその他の要因で参入しにくい、といったことが考えられます。この点で思うのは、もはや鶏と卵ですが、日本メーカーのビールのラインナップの豊富さです。ここまでたくさんのラインナップを揃えているのはすごい。カナダの国内メーカーといえども、お店で売っているのは1ブランドか、せいぜいもう少しという感じがあります(作ってはいるのかもしれないけれど)。

お店で見たときには沢山ビールがあるなというだけですが、誰が作っているのかなと考えると、いろいろ違いが見えてきます。今回だと、数社で沢山の商品を供給している市場と、沢山の企業が一種類ずつ商品を供給している市場。企業では製品ラインが増えてくると、その整理統合が行われます。集中が大事だとも言われる。けれども、市場が複数のラインナップを求めているのに集中をしてしまうと、他のラインナップは他社で占められることになります。戦略の立てどころです。


お花見厳禁。

マーケティングというとあまり思い付かないのですが、消費文化というといろいろと思い出すこともある今日この頃。紅葉続きで、これはどこかに書かねばと思っていたことがありました。トロントは、アルコールに厳しい街です(泣

勝手な想像として、西欧諸国の多くは、アルコールに寛容なイメージがあります。もちろん、未成年の飲酒については日本よりも厳しいですが、なんといいますか、お昼からちょっとビールを飲むとか、シエスタするとか、そういうことに違和感がないと思っていました。ところがトロントはそうでもありません。

まず、屋外でアルコールを飲むことは基本的にできません。お花見や紅葉を見ながらというわけにはいきません。話半分とはいえ、助手席にビールでも置いて(置いただけですよ)アルゴンキン公園でもうろつこうものならば、見つかったら罰金とのこと。車で持ち運ぶ場合、アルコール類はトランクに入れておくのが無難です。持ち歩く際も袋に入れておくこと。

そもそもアルコールを買おうとしても、そう簡単には買えません。コンビニはもちろん、スーパーにも売ってないからです。アルコールは、LCBOに行く必要があります。LCBOは、Liquor Control Board of Ontarioですので、オンタリオ州直轄(ということは、別の州に行けばまたルールが変わるのかも?少なくとも、ケベックはもっと自由でした)。あと、The Beer Storeというところもありますが、こちらはそんなに多くないかも。

さらに、LCBOに家族で買い物に行って、子どもがビールを手に取ろうものならば、怒られます。未成年は触ることすら駄目。20歳ぐらいから飲んでも良いのですが(19歳?)、少なくとも見た目で25歳ぐらいまではIDを提示しなければ購入できません。このあたりはアメリカも同様かもしれません。

なぜこう厳しいのか。問題はそこですが、そこまでは今のところ。。。たぶん禁酒法の名残なのかなと思いますのと、考えてみれば、日本でもこんなにあちこちで買えるようになったのは比較的最近のことでした。ちょっと前までは免許で厳しく管理されてましたね。コンビニにビールが置かれるようになる話が、いろいろとニュースになっていたことが今となっては懐かしいです。と考えれば、このあたりも研究の余地が。。。

 

ハロウィン、あるいは地蔵盆

日本でもだんだんと広まりつつある気がするハロウィン。仮装行列もさることながら、trick or treatのかけ声よろしく、子どもたちが各家庭を回ってお菓子を集めるイベントです。

カナダだとかなりの一大イベントらしく、ずいぶんと前から仮装グッズが沢山売られています。男の子だとヒーロー系、女の子だとプリンセス系の洋服が人気というのは、大体世界共通なのかもと思う次第。それと合わせて、怖い系?といいますか、ゾンビやらゴーストやら、何かの妖怪やらというファッションも好きな方は好きなようです。前の週にはZombie Walkがダウンタウンでありました。本格的すぎて怖いので興味のある方だけ下のサイトをどうぞ。毎年の写真があります。


Toronto Zombie Walk

前日は仮装ダンスパーティーがあり、カボチャコンテストがあり、それから当日もひとしきり学校ではダンスパーティーがあって、その後はみんなでお菓子をもらいに回っていました。中には本格的にお化け屋敷化している家もあり、そこから仮装した魔女みたいな人が出てくると正直大人でも怖い。子どもが変なお面かぶっていても、ちょっと怖い。

見も知らぬ人の家に出かけてドアをノックし、お菓子をもらうというのはなかなかのイベントです(とはいえ、本当にどの家でも良いというわけではなく、家の前のハロウィン仕様で飾っているところに行く必要があるようです)。そんなことをつらつら眺めながら、前のお墓の話ではないけれど思い出したのは地蔵盆でした。たぶん関西の行事だと思うのですが、地蔵盆はあちこちのお地蔵さんを回ってお菓子を集める日、だった気がします。仮装はしなかったと思いますし、ゾンビやらモンスターが出たりはしませんが、普段言ったことも話したこともないところにも行って、夜だし提灯が飾ってあるし、ちょっとひんやりする感じもあり、そこにいる人にお菓子をもらう。僕が中学か高校ぐらいにはもうやらなくなってしまった気がしますが、それでも、提灯は管理されていたような(最後、返したのかな)。


ネットで見ても、やはりハロウィンと地蔵盆が似ているという記事が結構あります。今でも残っている地域もあるのだと思いますが、地蔵盆がだんだんとなくなり、代わってハロウィンが普及してくるとすると、これはこれで面白い現象だと思った次第でした。


ヨーロッパ諸国のハロウィン(PDF)
ゴットフリート・コルフ(編)、河野眞(訳)、愛知大学紀要?