こんにちは。3年の勝元です。
「世界は誰かの仕事でできている」
「この国を、支える人を支えたい」
「その経験は味方だ」
日本で暮らしていれば誰もが一度は耳にしたことがあるフレーズではないでしょうか。これらは株式会社電通のコピーライター、梅田悟司さんによるコピーライティングです。今回は梅田さんの著書、『「言葉にできる」は武器になる。』について綴っていきたいと思います。
私は高校生の頃、文章を書く能力を向上させたいと思い、「文章術」などと銘打たれた本をいくつか読みました。それらの多くに共通していたのが、「文章を書く方法」ではなく、「考えをまとめる方法」について論じていたことです。本書でも例に漏れず、「書き方」について触れる前に「考え方」について紹介していました。
本書は3章にわたり、「伝わる言葉の生み出し方」を説明します。
1章では、意識されずに消えていく思考=『内なる言葉』の重要性を論じています。広告の目的はおおよそ「商品・サービスを購入してもらえるよう顧客を動かすこと」です。しかし厳密には童話『北風と太陽』に表現されるように、人は他人を動かすことはできません。ただ「動きたくなる空気をつくる」ことが精々です。そこで、広告を打つ際は「買って欲しい」という主張を理解されるだけではなく、相手に「買いたい」と思わせることが必要になります。それに役立つのが『内なる言葉』と向き合うことです。意識されず流されてしまいがちな思考と向き合い、思考の解像度を高めることで、意見・主張を上手に伝え、共感のレベルまで伝えることができるようになります。
2章では、『内なる言葉』との具体的な向き合い方を7段階で紹介しています。第1段階の「書き出す」作業は、本書に限らず様々な書籍で薦められている、基本的なステップになっています。さらに書き出した思考を、「なぜ?」「それで?」「本当に?」と3つの観点から掘り下げていく「T字型思考法」など様々な手段を用いて掘り下げ、内なる言葉と向き合い思考の解像度を高めます。
3章では実践的な「言葉にするプロセス」を、2つの戦略で紹介しています。どちらの戦略も表現方法におけるテクニックになります。中でも「ターゲッティング」はマーケティングの基本でもあり、「反復」「リズム」「比喩」等は、維持リハーサル・チャンキング・精緻化リハーサルを通じて顧客の短期記憶・長期記憶に残りやすく、マーケティングの視点から見ても合理的なテクニックと言えるでしょう。
ここまで説明しておきながら、私は高校生の頃に本書を読んでから大学生になってからの3年間、以上のプロセスを実践したことはありません。というのも、非常に時間や手間がかかるからです。そこで、本書を参考にしつつ気軽にできるよう考えた私なりの「内なる言葉との向き合い方」をご紹介したいと思います。
考えたことをスマホのメモアプリに書き出す、時間を置いて見直すことは基本として、そもそも一体何について考えれば良いのでしょうか。私は決まって、小説やニュース、友人の話などを見聞きしたときに「自分だったらどうするか」を考えてみるようにしています。次いで、自分とは考え方が異なる友人たちを思い浮かべ、彼/彼女だったらどう考えるかを想像します。これを習慣づけるだけで、ぐっと考える癖がつくようになりました。
みなさんも本書を読んで、「伝える言葉」を作るための習慣を作ってみてはいかがでしょうか。
参考文献:梅田悟司(2016)『「言葉にできる」は武器になる。』日本経済新聞出版社社.